1.支局長からの手紙:ほどほどに /愛媛
,毎日新聞
RV=51.4 2007/07/01 13:01
キーワード:平年,記録,松山,降水,時間,予報,流れ,前線,南,いう
大阪の自宅は、淀川のすぐ近くにあります。ゆったりとした流れを見ながら朝、日課のランニングをするのが楽しみでした。気持ちまでゆったりとしてくる気がしたからです。だから、単身赴任先の松山に5月に着任してからも、努めて川沿いを走るようにしてきました。でも、石手川はところどころ干上がり、重信川の流れも細々としていて、どこか物足りなく感じてきました。
しかし、小中学校のプール使用が禁止になり、上水道の給水が制限されるほど水不足が深刻化してくると、以前とは別の思いで、川の流れを注視しています。会合などに行くと、「94年の大渇水」が話題に上り、「お中元に県外の人から水を贈られた」「シャワーがわりに液体を体に『シュッ、シュッ』とふりかけてた」「あの時より今年はひどくなりそうな気がする」などなど、体験者の話を何度も聞くようになりました。松山では当時、7月26日~11月26日まで給水時間が制限されました。
最も厳しかった8月22日~10月21日は、午後4~9時の5時間しか水が出ませんでした。井戸水を使い、営業には支障はなかったという小料理屋の人は、「風呂に入れなくなるからとお客さんは午後8時には帰ってしまい、暇でしょうがなかった」と振り返りました。確かに、「軽く一杯」と飲みに出掛けている気分ではなさそうです。
松山地方気象台によると、6月の降水量の平年値は松山で188ミリ。今年は3分の1程度にとどまりました。原因については、大陸からの冷たい空気が南下しやすい大気の流れになっていて、四国を通過する低気圧や梅雨前線が、四国の南の海上で停滞しやすかったことをあげています。
一方で、94年と比較すると、気圧配置の点で大きな違いがあるそうです。94年は、太平洋高気圧と、かなり高いところにできるチベット高気圧が重なり、晴れて暑い日が続き雨が降りませんでした。今年は太平洋高気圧はそれほど強くなく、梅雨前線の活動が弱いだけで、量は少ないものの雨は降っています。この先1週間の予報では、梅雨前線などの影響で、平年並みの降水量を見込んでいます。7~9月の3か月予報でも、降水量は平年並みになるとみています。
ならば、水不足は解消されるかというと、そう単純でもありません。7月は平年並みに雨が降ったとしても、6、7月の2カ月を合計した松山の降水量は200ミリ強で、平年の半分程度にしかなりません。ちなみに、昨年は6月8日~7月26日の梅雨期間で、556ミリの降水量を記録しています。
従って、この夏は意識的に節水に努めなければなりません。台風がきて大雨をもたらせば、ダムの貯水率も一気に回復し、水不足の不安からは逃れられます。でも、今度は土砂災害などへの警戒が必要になります。「ほどほど」のありがたさを感じるのは、天気に限ったことではないような気がします。【松山支局長・小泉健一】
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7月1日朝刊
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