3.平成18年7月豪雨:発生1年 教訓、次世代に 岡谷、追悼式で冥福祈る /長野
,毎日新聞
RV=23.3 2007/07/20 13:04
キーワード:土石流,知事
県内で12人の犠牲者を出した「平成18年7月豪雨」から19日で1年がたった。土石流などで8人が死亡し、住宅27棟が全半壊するなど最も被害の大きかった岡谷市では、追悼式が開かれ、犠牲者の冥福を祈った。
土石流発生現場から近い同市湊地区のみなと保育園南側で行われた式には、遺族や岡谷市、消防関係者ら約120人が参列。午前9時に合わせ市内では一斉にサイレンが鳴らされ、参列者は市内での犠牲者数と同じ八つのろうそくが飾られた祭壇に向かって全員で黙とうした。
林新一郎市長は「私たち住民にとって、教訓にするにはあまりにも不幸な災害だった。実態や経験を全国各地に発信し、次世代に引き継ぐことが使命。亡くなった方のためにも安全で安心なまちづくりを成し遂げたい」と、時折、言葉を詰まらせながら式辞を述べた。参列した村井仁知事は「長野は変化に富んだ美しい自然に恵まれているが、その自然が牙をむき、想像を超えた試練を与える。このような悲しみを繰り返さないように地域や市町村と連携し対策に真正面から取り組むことを約束する」と述べた。
続いて、土石流による流木約80本で作られたやぐら2基に火がともされ、鎮魂の火が燃える中、参列者が祭壇に献花。遺族を代表して父滋さん(当時75歳)を失った花岡義樹さん(46)があいさつし、「もっと早く避難していればと後悔する毎日。家族や生まれ育った家を失った悲しみは消えない。災害の教訓を風化させることなく、安心して暮らせる地域に発展させることが犠牲者の供養になると信じている」と述べた。【神崎修一】
◇犠牲者育てたドングリ、植林の遺志を引き継ぐ−−岡谷・湊小、追悼集会で誓う
豪雨災害で地元住民の避難所の役割を果たした岡谷市立湊小学校(増田正明校長)で19日、追悼集会が行われた。
集会には全校児童170人などが参加。午前9時に犠牲者の冥福を祈り、黙とうをささげた。集会の中で5年生28人が20センチほどのドングリの苗を紹介した。名前は「やっちゃんのドングリ」。土石流に巻き込まれて亡くなった花岡泰男さん(当時58歳)が育てていたものだ。市臨時職員として市有林の管理などをしていた花岡さんは生前、荒廃する地元の山に広葉樹を植林しようと、ドングリの苗を育てていた。
花岡さんの死後、苗は親せきの矢島順子さん(57)=同市=が保管してきた。今年6月、矢島さんは5年生が災害後、土石流発生の原因などを学習し続けていることを知り、2鉢を託した。吉田崇哲くん(10)は「枯らさないように心を込めて育てて、山を強くしたい」と話す。矢島さんは「泰男の思いを子どもたちが受け継いでくれてうれしい」と話す。
集会で5年生は「秋には山に入ってドングリを拾い、苗を育てよう」と呼び掛けた。花岡さんの遺志は着実に引き継がれている。【池乗有衣】
7月20日朝刊
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