2.台風5号:縦断から1週間 再建制度、孤立状態集落、ごみ・流木、農林水産業 /大分
,毎日新聞
RV=46.4 2007/08/09 16:01
キーワード:海水浴,知事,佐伯
県内各地に大きな被害をもたらした台風5号の縦断から、9日で1週間になる。調査が進むにつれ、新たな床上浸水世帯が判明するなど、被害が次々と明らかになってきており、県民の生活に支障が出てきている所もある。県は独自の支援制度を初めて適用するなど、復興支援を本格化させる。8日は県議会県民クラブの10議員が由布市中心に被災地を踏査。9日は国土交通省が大分、佐伯、豊後大野市などへ職員を緊急派遣する。
◇県、再建制度を初適用 床上浸水、半壊世帯に
県は8日、独自の「災害被災者住宅再建支援制度」を、台風5号被災者に初めて適用することを決めた。広瀬勝貞知事が記者会見で明らかにした。由布、中津、佐伯、臼杵、竹田、豊後大野市で計100以上の床上浸水世帯(生活再建費各20万円)と、由布、竹田、豊後大野市の半壊計3世帯(生活再建費30万円と住宅再建費100万円)が対象。各市が事業主体となり、県が半額補助する形だが、各市とも前向きに事業化を検討しているという。
国の被災者生活再建支援法は、全壊に限られ、県内100世帯以上か1市町村10世帯以上という枠を設けている。県は「役に立つ場面が少ない」と昨年6月、独自の制度を創設。半壊や床上浸水も対象に含め、枠を全壊県内10世帯以上か市町村5世帯以上に広げた。更に、国制度の支給名目は「生活再建」と「居住安定」(全壊住居取り壊し)だけだが、県制度は「住宅再建」も含めた。
県は、床上浸水3世帯を全壊1世帯に換算する災害救助法適用基準を準用。これにより、制度創設後、初めて適用基準を満たす災害になった。消防防災課は「該当する世帯は、市に問い合わせてほしい。支給によりスムーズな生活・住宅再建が果たせれば」としている。
大分の制度に着目した国も現在、制度見直しを進めているという。【梅山崇】
◆孤立状態集落
◇復旧へ本格工事−−県道崩落、豊後大野
台風5号で8世帯14人が孤立状態になっている豊後大野市緒方町上畑、尾平地区周辺を8日、歩いた。台風の影響で約15キロ離れた旧緒方町中心部へ向かう川沿いの県道が約70メートルに渡り崩落、宮崎県高千穂町に抜ける道路も崩れ、集落への車の出入りが不能になったまま。住民は疲労の色が濃い。
住民のほとんどが自前の交通手段がない高齢者のため、普段は集落を走る一日4便のコミュニティバスが頼りだが、集落の入り口までしか近づけない。地区で班長を務める上野光幸さん(72)は「集落に3台くらいある車で近くまで運ぶ。もともと不便なところなので助け合いは当然だが、早く道路が復旧してほしい」と話す。
上野さんはこの日も、病院での人工透析が必要な上野民子さん(72)を約1キロ離れたバスの乗り場へ連れて行った。民子さんは「近所の助けがありがたい。急病人が出なければいいが」と不安そうだ。
豊後大野市は被害発生直後から、住民の健康診断をしたり、食料支援をしたりして不安解消に努めている。崩落現場では4日から本格的な復旧工事が始まり、崩落個所に土のうを積む作業が進んでいる。県道路整備促進室は「12日中には市中心部側への通行ができるようになる見込み」としている。【小畑英介】
◆ごみ・流木
◇重機で流木処分−−佐伯・瀬会海水浴場
佐伯市上浦の瀬会海水浴場に大量の流木などが漂着、浜を埋め尽くしている。台風5号による大雨で川から流れ出たとみられ、同市は「海水浴の楽しみ半減」と、重機で流木の処理を始めている。
台風5号通過後の4日以降、直径50センチ以上の流木や川岸に生えるヨシなどが海岸を埋め尽くしている。8日午後、臼杵市から子供と来た男性は「奇麗な海水浴場で子供たちを泳がせたかったが残念」と恨めしそう。ごみに驚いたのか、Uターンする車も多い。
同海水浴場は長さ250メートル、幅30メートルの小石交じりの砂浜が続く。年間1万人以上が訪れ、環境省の「快水浴場百選」に選定されている。同市は「今週末までには片づけたい」と処理作業を急いでいる。
また、番匠川の川岸にも河口から数キロ上流まで流木が打ち上げられたまま。佐伯河川国道事務所は「範囲が広いためどういう手順で作業するか検討している段階」と頭を抱えている。【下畑和幸】
◆農林水産業
◇被害額は現16億円弱
台風5号の農林水産関係被害(6日現在)がまとまった。農業14億6000万円、林業1億2600万円、漁業600万円の計15億9300万円。農林業でまだ増える可能性があるという。
農業は、水稲倒伏、みかん樹体被害、ホウレンソウ冠水といった農産物被害が1009ヘクタール・2億8000万円。栽培施設が151カ所・3000万円、田畑(崩落など)797カ所・9億200万円、農道や用水路198カ所・2億4800万円。
林業は、林地(由布、豊後大野市各1カ所崩壊)8300万円、治山施設(由布市の1地区約10カ所)600万円、林道13カ所・3300万円など。漁業は、水産関係施設が18カ所・300万円、漁港施設3カ所・300万円だった。【梅山崇】
8月9日朝刊
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