2.つなぐ平和:学び舎を訪ねて/7 皆実小 シダレヤナギ /広島
,毎日新聞
RV=29.0 2007/08/10 17:02
キーワード:広島,京都
◇命のたくましさ示す
「こんな身近に被爆した樹木があって、元気に生きているなんて」
5年生だった昨年秋、京都から転校してきた上田和茂君(12)は驚いた。爆心地から約2・1キロの広島市立皆実小学校(南区皆実町1)の校庭には、被爆を耐えた1本のシダレヤナギが、今も青々と葉を茂らせて、風に揺れている。
その力強さに心を打たれ、そこから友達を思いやる心や命の大切さを考えて、作文にまとめた。今年6月、広島市内の小学生20人が平和への意見発表をした「こどもピースサミット」で、その作文を読み上げた。
柳はかつて、一列に6本あったという。戦前、同じ敷地にあった県師範学校との境界になっていた。広島市編「広島原爆戦災誌」によると、原爆で校舎は全半壊。建物にいた教職員や運動場で遊んでいた児童ら16人が即死した。傷ついた柳は戦後に切り取られ、1本だけが残った。
その1本も内側に大きな空洞があり、台風で太い枝が折れるなどして衰弱し始めた。01年、当時校長だった中本健治さん(61)は樹木医に相談し、根元に腐葉土を入れたり、支柱を設けるなど補強を尽くした。
「当時の5年生には作業を見学させたんですよ。命のたくましさを知ってほしくて」と振り返る。中本さんの叔父は被爆から8年後、原爆症で苦しみながら亡くなった。教壇からは退いたが、「広島で何があったのか、知ってほしい」という思いは強い。
6年生の板倉彩美さん(11)は「最初に柳を見たとき、痛々しくて悲しくなった」と言う。今では元気な姿に感動を覚える。毎年芽吹くシダレヤナギが、広島の記憶と平和の願いを確かにつないでいる。【宇城昇】
8月10日朝刊
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