1.那覇市長田 避難続く/集中豪雨
,沖縄タイムス
RV=62.8 2007/08/13 18:00
キーワード:長田,マンション,知事,自治
安里川はんらん 県が対応協議
沖縄地方で十二日午前まで続いた大雨で、マンション建設現場付近の土砂崩れが懸念されている那覇市長田では避難指示・勧告が十三日午前も継続され、八世帯、十七人が同市民会館に避難を続けている。同市災害対策本部や警察、建設業者らが現場の警戒を続けており、天候の回復具合などを見ながら避難指示・勧告の解除時期を探っている。また同市の安里川がはんらんした蔡温橋一帯で店舗や住宅に浸水被害が相次いだことを受け、改修工事を進める県南部土木事務所の職員らが視察に訪れた。県土木建築部は首里勇治部長を中心に対応を協議。仲井真弘多知事も同日午後、これらの災害現場を視察した。
安里周辺の住民が浸水被害の原因は改修工事だと指摘していることについて、同事務所の担当者は「本庁とも調整中で答えられない。できるだけ早く調査したい」と話すにとどめた。
同事務所によると、工事は二〇〇五―〇八年度の予定。一九五四年建設の蔡温橋を架け替えるとともに河川を約八メートルから十二メートルに拡幅し、浸水被害の予防を目的としている。
一方、那覇市長田の建設現場では、高さ二十メートル、幅五十メートルの擁壁が下側に五ミリ―一センチほどずれているのが確認されたほか、上方にあるマンション「ライオンズガーデン長田」の敷地内で十センチ幅の亀裂が生じ、地盤沈下が見られる。建設業者がすき間にセメントを注入し、ブルーシートをかぶせるなど対策している。
擁壁の下方にある建設中のマンションを手掛ける不動産会社(本社・東京)の広報は「予想しない雨量でこうした事態になった。いまのところ工事に問題はなかったと聞いている」と説明。施工は県内の建設業大手が担っており、「原因が特定されれば適切に対処したい」と話した。
「ライオンズガーデン長田」は、一九九一年に当時の沖縄大京(現・大京沖縄支店)が建設した。
入居者の委託を受けて建物を維持管理する業者(那覇市)によると、入居者から今後の対応への問い合わせが寄せられているという。
大京本社の広報によると、沖縄支店では十一日から十二日にかけて対策会議が開かれたという。今後も状況を見た上で検討するとしている。
那覇市民会館では、市の担当者が避難者の健康状態を聞き取り調査した。現在のところ健康を害している人は確認されていないという。市が飲料水や乾パンを配布している。
県災害対策本部のまとめによると、同日までに県内で土砂崩れ三十一件、床上浸水六十四件、床下浸水二十二件が確認された。
那覇市以外でも、九世帯、三十三人が近くの公民館などに自主避難している。
◇ ◇ ◇
住民「避難いつまで」/保育園休園職員奔走
「避難いつまで…」。土砂崩れの危険性のため、十三日も避難指示・勧告が出されている那覇市長田のマンション建設工事現場周辺。住宅密集地で起きた突然の災害に住民も困惑。同日も早朝から近隣住民が土砂崩れの現場を不安そうに遠巻きに見詰めていた。
建設工事現場では、同日午前九時ごろから施工業者らが、ブルーシートで覆った土砂崩れ現場などを点検。隣接する「ライオンズガーデン長田」では、水道やガス会社が出入りし、マンション内を点検する作業が見られた。
建設工事現場の道向かいにある長田保育園は、避難勧告のため、同日は休園。子どもたちの安全を考え、勧告が出ている間は園長の自宅で世話する予定。午前中は遊具などを運ぶ作業に追われた。大城律子園長は「この状況がどれだけ続くのか。不安でいっぱい」と話した。
建設現場に面する道路は小中学生の通学路。長田二丁目大倉ハイツ自治会は、今年六月に施工業者に対して、土砂流出の防止、崩落対策の徹底など八項の要望書を提出していた。
同会の安村哲三会長は「記録的な大雨とはいえ、心配していたことが現実になった」と話す。
十二日に、施工業者に状況を聞いたところ、「土砂流出は止まっており大丈夫」と説明を受けたという。「これから台風の時期になるが、大雨が降らないことを祈るだけ」と不安そうな表情を浮かべた。
避難場所となっている那覇市民会館周辺は、人通りもまばらで静まり返っていた。
沖縄ヤクルトは、避難している住民にラーメンや飲み物など六十人分を贈った。国場センターで勤務する寿良子さん(35)は、約十五人が避難していると聞きつけ「営業している地域の皆さんに自分のできることをしたかった」と荷台で食料を運んだ。同会館で勤務する女性(60)は、「避難している住民の中には眠れないという人もいた。風呂に入るために出入りしている人もいる」と語った。
職員、朝から警戒 沖縄市
【中部】斜面の土砂が幅三十メートル、高さ十五メートルにわたって崩れた沖縄市役所裏手の現場では十三日午前、朝から市職員数人が警戒に当たったが、前日と大きな変化は見られなかった。
現場は二〇〇一年にも大雨で同様な土砂崩れが起きており、県が「急傾斜危険個所」に指定している。県中部土木事務所は十二日午後、土砂が押し寄せた室川貝塚歴史公園と、すぐ近くの室川市営住宅の構内道路の一部に土砂流出防止用のブロックと立ち入り禁止のテープを設置して車両通行禁止にするなど、緊急処置を取った。同事務所は十三日も対策を協議している。
市営住宅の住民生活には大きな支障はないが、現場そばの二号棟に住む女性は「応急処置でなく、恒久的な対策をしてほしい」と要望した。
|