1.環境省が初の干潟生物調査 生息地に空白域見つかる
,産経新聞
RV=68.0 2007/10/13 20:48
キーワード:干潟,流域,景観,減少,複数,泥,環境,東京湾,重要,減る
これまで全国的に生息が確認されていた干潟の生き物の一部に、生息地の空白域が存在することが、環境省の全国的な生物調査で判明した。地域的な絶滅の可能性もあり、同省では「継続的に調査する」としている。一方で大阪湾の極めて小さな干潟で多種類の生物が報告されるなど、国内に残された干潟のこれまでにない実態が明らかになた。
干潟はかつては各地の河口付近に見られたが、現在全国で約500平方キロメートルが残っている程度。浅瀬で埋め立てが簡単なことから埋め立て地になったり、泥の浚渫(しゅんせつ)によって姿を消してきたが、近年沿岸水域の浄化作用や景観、水産資源といった観点から各地で保全、再生が試みられている。
今回の調査は、自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)の一環で、統一的手法による全国的な干潟生物対象は初めて。現地調査は平成14−18年度に実施。全国を10ブロックに分けて、藤前干潟(愛知県)や谷津干潟(千葉県)など主要な157カ所を、大学や博物館などの研究者らで調べた。
その結果、これまでの学説などでは分布域が東北から九州にかけてとされる巻き貝の一種イボウミニナが、東京湾など関東では全く見つからなかったのを始め、ハマグリ、オカミミガイなど複数の種類で従来の分布域内に、空白域がある種があることが判明した。
干潟の底生生物は、幼生が海流に乗って沿岸に生息域を拡散している種も多く、上流域での生息数の減少などで幼生が供給されなくなれば、環境の変化に伴って個体群が減ったり絶滅したりする可能性が高いという。
環境省生物多様性センターは「ある地域で生息しなくなる“地域的絶滅”の危険を示すものといえるかもしれない。一度の調査だけでは判断できないので、継続的に調査したい」としている。
一方今回の調査では、、貝類やカニ類など全国で1667種が確認された。地域別で多かったのは、九州(38カ所)で700種、沖縄(19カ所)で630種、中国四国(19カ所)454種、近畿(14カ所)380種。
このうち特定の地域に生息する地域特有種は、沖縄が118種と群を抜いて多く、九州35種、北海道18種などが続いた。
今回の調査に加わった、大阪市立自然史博物館の山西良平館長は「干潟は魚介類の幼生の“ゆりかご”の役割も持つなど、その重要性は大きい。今回の調査で、干潟調査の基礎ができたので、今後の長期にわたる調査に期待したい」と話している。
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