文部科学省科学技術振興調整費
「日本社会に適した危機管理システム基盤構築」研究成果発表ワークショップ

「どのような危機に対しても効果的な危機対応を可能にするために」

日時: 平成18年3月13日(月)午前10時30分〜午後4時30分
  平成18年3月14日(火)午前10時30分〜午後5時00分
会場: 帝国ホテル東京 本館2階 蘭の間
主催 : 京都大学防災研究所巨大災害研究センター
  参加無料 定員100名
  *参加を希望される方は必ず事前にお申し込みください。

開催の主旨

2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロでは、まったく予想外の事態に対する社会の危機対応能力が問われた。この危機に対する米国の対応は、一元的な危機管理システムを整備することの有効性を証明した。米国の危機管理体制は、「どのような原因によって発生する危機に対しても効果的な危機対応を可能にする」ことを目的として、ICS(Incident Command System)の概念にもとづいて設計されている。ICSは米国だけでなく、英国、EU諸国などの先進諸国や中南米諸国も採用しており、いわば世界の危機管理体制の事実上の世界標準となっている。わが国は先進諸国の中でICS概念にもとづく一元的な危機管理体制を持たない唯一の国である。

わが国でも2004年に頻発した風水害や新潟県中越地震のように自然災害の発生が頻発化と激化の傾向を示している。また、2005年末に発生したスマトラ地震津波災害の場合のように国外で諸外国と協働して、救助救援にあたる必要性も生まれている。さらに、鳥インフルエンザ、JR西日本尼崎脱線事故など、予想外の原因による危機の発生に加えて、2005年からは都道府県に国民保護計画の策定が義務づけられるなど、わが国においてもさまざまな原因による危機に対して効果的な危機対応を考えるべき時期にあるといえよう。

それぞれの危機は独自の様相をもっている。しかし、反面、「危機の拡大を阻止し、早期に社会機能の回復を可能にするハード及びソフトなシステムの構築」という観点に立つとき、そこには、危機発生直後から長期的な復興のありように関して、多様な種類の危機を通貫する一元的な危機管理の必要性も明らかになる。

わが国の危機管理体制の現状をみると、災害対策基本法にもとづく自然災害を中心とした防災体制がもっとも包括的である。こうした防災の現状を基礎としてわが国の社会風土の特性もふまえ、事実上の危機管理世界標準であるICS概念を援用して、わが国の社会制度に適した危機管理システム基盤に関する全体像を、人材育成システム、組織運営、情報処理、災害対応プログラムの4つの側面から提示し、新しい危機管理基盤の導入に向けて今後とるべきロードマップを明らかにする。

今回のワークショップは平成15年度から3年計画で実施された文部科学省科学技術振興調整費「日本社会に適した危機管理システム基盤構築」の研究成果を社会に対して発信する試みである。

プログラム

3月13日(月)

10:30-10:50 開会挨拶

京都大学防災研究所 所長 河田惠昭
(「日本社会に適した危機管理システム基盤構築」研究運営委員会委員長)

10:50-11:00 挨拶

文部科学省 科学技術・学術政策局調査調整課 科学技術振興調整費室 室長 室谷展寛

11:00-12:00 基調講演

「『日本社会に適した危機管理システム基盤構築』研究が目指したもの」

京都大学防災研究所 教授 林 春男
(「日本社会に適した危機管理システム基盤構築」研究代表)

<昼食>

13:30-15:00 第1セッション「日本型ICSの提案」

テーマ:
本研究プロジェクトでは欧米諸国における標準的な危機管理システム、ならびに日本における危機対応についての現状分析から、日本に適した危機管理システムのあり方に関する検討を行ってきた。本研究プロジェクトの研究成果を今後、如何にして実社会に還元していくのかが求められている。本セッションでは、どのようにしてICS型危機管理システムを標準的な危機管理システムとして日本社会に導入していくのか、さらには根付かせていくのか、について検討を行う。

モデレーター:牧 紀男(京都大学防災研究所)

パネリスト:

日本にICS型危機管理システムは導入可能か:自衛隊の組織運営システム

野中光男(陸上自衛隊元・東北方面総監)

ホーリスティック(緊急対応・応急対応・復旧・復興)な標準的危機対応システムの可能性 −米国National Response Plan(NRP)におけるEmergency Support Functions (ESF)−

田中 聡(富士常葉大学環境防災学部)

ICS型の危機管理システムから学ぶこと「大規模災害発生時における国の被災地応急支援のあり方検討会」における議論を踏まえて

岩下啓希(内閣府政策統括官(防災担当)付 参事官付企画官(災害応急対策担当)

ICS型危機管理システム導入ツール;標準的な災害対策センターの空間構成の提案

牧 紀男(京都大学防災研究所)

<昼食>

15:00-16:30 第2セッション「被災者支援」

テーマ:
阪神・淡路大震災、新潟・福井水害、中越地震、WTC事件などを素材に被災者支援原則の枠組みを提案し、新潟中越地震における高齢者支援、生活復興計画策定支援、災害時要援護者支援対策策定の実務、被災者支援法制の法理学的検討というそれぞれの視点から、被災者支援原則を検討する。

モデレーター: 立木茂雄(同志社大学社会学部)

パネリスト:

被災者支援原則の構築

立木茂雄(同志社大学社会学部)

新潟県中越地域における高齢者支援の実態分析や小千谷市復興計画策定支援の視点から

田村圭子(京都大学防災研究所)

災害時要援護者支援対策策定の実務

丸山直紀(内閣府防災担当)

生活再建支援基本法(案)の法理学的検討

井出明(近畿大学経済学部)

17:30〜 <交流会>

3月14日(火)

10:30-12:00 第3セッション「情報」

テーマ:
危機管理情報の新しい収集・発信システムについて論じる。
パネリスト(研究者、行政、大手ライフライン会社の関係者)に話をしてもらった上で、現在の問題、今後のあるべき姿などを会場と一緒に議論する。

モデレーター:目黒公郎(東京大学生産技術研究所)

効果的な危機対応を可能とする情報処理の将来像

浦川 豪(京都大学防災研究所)

地震時の災害情報ステーションを活用した情報共有について

菜花健一(東京ガス(株)防災・供給部)

「災害対応の実経験を踏まえて自治体の首長が語る危機管理情報を取り巻く環境」災害対応と危機管理情報について

森 民夫(新潟県長岡市長)

<昼食>

13:00-14:30 第4セッション「危機管理のための人材育成システムの構築」

テーマ:
危機管理にあたる人材を、短時間で効果的に教育・訓練することが可能な人材育成システムを実現するための、体系的なカリキュラムの開発とそれを活用する社会制度の検討結果について論じる。

モデレーター:佐土原聡(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

パネリスト:

「危機管理のための人材育成システムの構築」のミッションと体制

佐土原聡(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

行政・自治体のためのカリキュラム −行政分科会活動成果報告−

重川希志依(富士常葉大学環境防災学部)

企業のためのカリキュラム −企業分科会活動成果報告−

指田朝久(東京海上日動リスクコンサルティング(株)リスクコンサルティング室)

住民のためのカリキュラム −住民分科会活動成果報告−

秦 康範(独立行政法人 防災科学技術研究所 地震防災フロンティア研究センター)

社会制度の検討 −人材育成システム制度評価分科会フレームワーク−

金谷裕弘(総務省消防庁防災課長)「社会制度の検討」

<休憩>

15:00-16:30 第5セッション「WTC:危機対応から復興までの過程」

テーマ:
WTCテロ事件における危機管理とその後の復興プロセスについて論じる。

モデレーター: Kenneth C. Topping (Topping Associates International)

パネリスト:

DESIGN OF CATASTROPHIC DISASTER MANAGEMENT SYSTEMS: LESSONS FROM THE WORLD TRADE CENTER DISASTER “A Generic Framework for Crisis Management Suitable to Japanese Society”

Kenneth C. Topping(Topping Associates International)

Recovering: New York City after 9/11/01

David Mammen (The Center for Good Governance, New York City)

WTC事件直後の危機対応プロセスとその評価

青山公三(Urban Policy Institute of New York,)

<休憩>

16:30-17:00 総括

京都大学防災研究所 林 春男

(敬称略)

*発表内容などは変更になる場合がございます。予めご了承願います。