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地震動は市民に一様な被害を与えたのではない。被災者とは一様な存在ではなく、復興からの立ち直りがたやすい層と、そうではない層が社会には厳然として存在する。
いわゆる災害弱者と呼ばれる人たちの存在を今回の震災は浮き彫りにした。
これからの復興や、あるいは今後の大災害を見据えた時、社会の中のこのもっとも脆弱な層が早く立ち直れるようにするための個別的な支援が必要であることがあきらかになった。
では、どのような取り組みを今後していけばよいのか。対策のカギは、政策や施策作りの最初の段階から当事者が直接参画することにある。災害弱者になりやすい層をどのようにして見つけるか。その人たちの特別なニーズや対処の仕方はどのようにするのか。このようなことについて教育を行う上で最良の立場にいるのが、当事者や当事者団体の人たちだからである。
さらに今回の震災では、高齢者みずからが他者への支援者として大きな活躍をした。地域の自治会や婦人会活動を支えているのは、高齢者であるし、退職後の生き方として地域でのボランティア活動に生きがいをもとめる高齢者も多い。このような地縁や関心縁をつうじた日常の人間関係が非常時にいかに大切か、私たちは今回の震災で学んだ。
これからの少子高齢化社会の中における都市災害を考えた場合に、当事者として、また支援者として高齢者自らが発言し、今後の取り組みについて提言をおこなうことは極めて重要である。そこで、メモリアル・カンファレンスVでは、高齢者を支援する施設・団体の運営者、自治会や婦人会の役員、ボランティア、学識者を招いて、高齢社会における都市災害の問題と、今後の施策づくりにつながる提言を行う会を企画した。
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