Memorial ConferenceVあなたの体験 DRS
Memorial Conference in Kobe V 〜 あなたの体験

長い一日
野津 洋子

 あの日を思い出すたび胸がつまります。
 がたがた、バリバリ、がんがん、なんともいえぬ揺れの中、ふとんをかぶって音をきいていてなにか上から落ちてくるものはないか、をかんがえていました。幸に足元にテレビがあるだけだったので、安心してふとんの中でじっとしていました。そして家の中にほしてある洗たく物をいろいろ考えながらじっとして少し落ち着いたので、ふとんからのぞくとガラスの入った障子が弓なりになって今にも折れそうになっていたので、又ふとんをかぶっているとバリバリとこわれる音と共にバラバラになって、幸い寒かったので厚いふとんだったのでけがもなく、やっと揺れがおさまった時、このまま出たらだめだと思い干してあった洗たく物をかたっぱしからはずして重ね着して靴下も3枚位はき、やっと立ち上って驚いた。もう、夜が明けたのかと思った。くらい白かったのです。よく見ると、なんと前の家がそのまま我が家へかぶっていて、そのかべの白い色が見えたのです。よくよく見ると、我が家のかべは半分壊れ、そこからもよそのかべが見えるぐらい壊れているのです。かいだんは突き上がって、おりるにもおりられず、2階の窓から外を見ると、細いろじの中に30世帯がみなどうしているだろうと窓からのぞくと前の並びの家は、ぜんぶ2階が1階になってしまっているし、道はなくなった。私も出なければと思っても出口はありません。外で皆の声も聞こえたので電柱をつたって降りられないかと見ましたが足元は、がれきの山でとても足をつくことが出来ない。おそるおそる下へ降りたが出口がない。どこから出ようと思っていると裏をたたく音が、ガラスをこわす音がきこえ、声がきこえ、やっと手を引いてもらいよその屋根の上をふみ、おそるおそる出ると途中でガス管が折れガスがふき出していたのには火のけがなくて本当によかった。みんなの無事を見て涙ぐんだ娘は三ヶ月の赤ん坊を連れていたので風邪を引かせてはと思っていた時、近くのタクシー営業所の中のタクシーが全車暖房をかけて、私たちや近所の人たちを乗せてくれ、大変助かりありがたく、この時助け合う気持ちがめばえたように思いました。私は近所を見てまわりました。一生懸命閉じこめられた人を助けるため。道具もないのに、そこらの木片でほったり、手でのけたりしてがんばっていました。その後学校へ行って見ましたが、一杯で入れない位でした。その日は、小さな公園でいろいろなものをたきながら、たおれかけの家からそれぞれ食べ物を持ちより、みんなで何とか暖をとりながら、娘のマンションはたおれなかったので夜は行きましたが、上沢なのであちらこちらで火災が発生していて早く消化をねがうばかりでした。
 一晩中眠れず、一夜を明かした。たった一日のことなのに長い長い日でした。もう5年目に入るのに思い出したり、見たりするたびに悲しくなります。2度とこの思いをしてほしくないとねがっています。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター