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Memorial Conference in Kobe V 〜 あなたの体験

震災を体験して
倉田 華絵

 震災は、私の人生を変えた大きな出来事であった。
 当時高校1年生であった私は、まだ将来について考えず、今を楽しむ事だけを考え、過していた。そんな年の1月17日。阪神・淡路大震災が起きた。あまりにも突然で、一体何が起きたのかがわからず、ただ、ただ、ベッドにしがみつき、揺れのおさまるのを待っていた。朝になり、テレビで被害の大きさを知った私は呆然とした。長田区は燃えあがり、三ノ宮などは信じられない有様。家族や家を失い泣き叫ぶ人々。「まだ中に人がいる!!」と、助けを求める人々。電話が通じず、身の安全を確認出来ない友人が沢山いた。
 そんな時に知人の死の知らせを聞き、私は体の震えが止まらなくなった。
 しばらくしてやっと学校が始まり、無事をたしかめ合っている友人達は涙を浮かべ、「良かったね。本当に良かったね。」と、口々に言いながらみんな泣いていた。家が倒れ、家族がケガをした友人は何故か明るく振るまい、「家、潰れてしもてん。」と、おちょけた口調で話す。その眼には涙が浮かんで「泣くものか!」と、くいしばる口元が震えていた。話をしている私も「泣くものか。」と口元をくいしばる。
 どうしてこんな事になってしまったのだろう。どうしてこんな悲しい思いをしなくてはならないのだろう。私には何も出来ないのか。励ます事しか出来ない自分に、苛立ちと悔しさが入り混じった。もう二度と、こんな気持ちを味合わせたくない、させるものか、と思い、将来、建設・土木関係の仕事に就く事を決めた。もっと地盤が強ければ、建物がしっかりしていれば、少しは状況が変わっていたかもしれない、と思ったからだ。
 それからの高校生活は、今までの生活とは一変したものとなり、目標達成の1歩となる大学進学に全力を注いだ。震災から5年。今私は、着実にその目標に向って歩いている。これから先、挫折しそうになる時は、あの時の悔しさを思い出し、突き進んで行きたいと思っている。「命を守る。」という目標に向って。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター