Memorial ConferenceVIIすまいとくらしの再建 DRS
Memorial Conference in Kobe VII 〜 すまいとくらしの再建 −わたしたちの場合−

住む人と人とを結ぶ住まい・くらしづくりのサポート
神戸市東灘区 石東 直子

 震災後1週間程して仮設住宅の申し込みが始まった時、わたしは西宮市役所でボランテイアとして申し込み用紙の配布を手伝っていました。用紙を取りに来られたおばあさんが、「わたしら地域から離れた仮設に当たっても、こおおてよう住まんわ」とつぶやかれました。その姿や声が脳裏に焼きつき、「何とかせなあかん」「この人たちは誰が支えていくんやろ」と思い、わたしをコレクティブハウジングの推進に駆り立てました。
 被災した多くの高齢者は、下町的な環境で日常生活が支えられてきました。住まいの近くにかかりつけの医者や気軽に外食ができる食堂や喫茶店があり、銭湯があり、地域コミュニティでお互いの安否の確認や生活支援がなされ、地域全体が住まいの続きのようなコレクティブタウン(協同居住の町)でした。震災は一瞬にして、このような生活基盤を消し去ってしまいました。そこで、復興公営住宅にコレクティブハウジングの事業化を提案しました。コレクティブハウジングとは、各住戸は台所、便所、浴室の備わった独立したもので、住戸の延長として協同スペース(協同台所、食堂、談話室等)があります。協同スペースの使い方や維持管理の仕方は居住者たちが決めて、そこを核にふれあい生活が展開され、ふれあいと助け合いの生活を期待するもので、「平成の長屋の再生」です。「いつでも誰かと会えるし、いつでもひとりになれる」「ひとりで食事をするよりも、たまには大家族のように集まって食べよう」という住まい方をイメージし、公営コレクティブ「ふれあい住宅」は、10地区(341戸)が建設され、入居後4年半から3年になろうとしています。10地区のふれあい住宅の協同居住の状況はさまざまです。下町長屋のように隣人との自然な行き来がなされている住宅、月毎にみんなで食事会や誕生会をして和やかなひと時をもっている住宅、忘年会、餅つきや新年会、雛祭り等が恒例になっている住宅、愛好者たちによるガーデニングや料理教室を楽しんだり、日帰り旅行をしたり、ボランティア登録をして助け合い活動をしている住宅もあります。しかし、まだ協同居住の意味が理解されず自分の住宅に閉じこもっている人たちが少なくない住宅もあります。
 現在、復興住宅の大きな課題のひとつは、住む人たちのコミュニティをいかに育むかということです。そこで、昨年の11月から1ヶ月間の社会実験として、「コミュニティ茶店・新在家南(3号棟)」を開店し、多くの住人が来られて大繁盛し、その継続を熱望されています。新しい住宅に馴染めず、住宅に閉じこもっている居住者たちが、隣人たちとふれあい、社会とつながった安全で心安らぐ生活を送れるようになることが、真の復興であり、そのための居住サポートを仲間たちと続けています。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター