Memorial ConferenceVIIすまいとくらしの再建 DRS
Memorial Conference in Kobe VII ~ すまいとくらしの再建 -わたしたちの場合-

ころばぬ先の杖
神戸市東灘区 宮崎 美江子

 阪神・淡路大震災の前夜、香港旅行から遅く帰って来た私達は、ぐっすり寝込んでいました。明け方、突然の大きな揺れ、家具が倒れ、たんすの上の物が頭の上に落ち、身動きの出来ない状態になりました。電気は消え、まっくらの中で夫と声を掛け合い、お互いの無事を確かめました。少しずつ明けてきましたが、車の音も、人の歩く気配も無く、あたりは、しーんとしていて、いつもより静かな朝です。やがてそれは、淡路から神戸にかけて大震災が起こり、多くの人が亡くなり、けがをし、家々が壊れ、火事で町々が焼けるという大惨事が、私達の町神戸に起こっていたことが分かってきたのです。
 神戸に地震が起こるかもしれないということは、子供の頃から聞いたことがありませんでした。この辺りに、活断層があることも、皆全然知りませんでした。震災のあとそのことを知って、「活断層って何なの。」と皆で言い合いました。それが動くと大地震になり、大きな被害が出ることだけではなく、その言葉さえも知りませんでした。神戸には、地震が無いと思いこんでいたのです。
 私達は、自分の住んでいる土地には、どんな自然災害が起こりやすいかを知っていなければと思います。それは地震だけでなく、山くずれで土石流が起こったり、津波で海岸の家々が流されたりするなど-。
 国や地方自治体は、その災害をどう防ぐかを、住民にくわしく知らせて欲しいと思います。それは、その土地の値うちを下げることになると反対する人もあるでしょう。でも、大きな災害で、多くの尊い人命が失われ、けが人が多く出たり、家を焼かれたりすることを思うと、災害に対しての知識を自治体は、住民と一緒に考えて欲しいのです。
 今度の震災では、昔にたてられた重い瓦ぶきの家が壊われ、大きなはりの下じきになって、亡くなったり、けがをしたりした人が、多いようでした。国や自治体は、そうした建物に住む人たちに、住居を補強する費用を出してはいかがでしょうか?
 災害が起こってから、再建のために多くの費用と長い年月をかけ苦労を重ねるより、有効なのではないでしょうか?皆の意識が高まれば、建築業者は、災害に強い建築物を建て、土建業者は、災害に強い道路や橋を造ることでしょう。
 国も自治体も、私達が収めた税金を、災害を防ぐために使ってほしいと思います。そうすれば、皆、納得し、個々にも災害を防ぐ準備をすることになるでしょう。
 「ころばぬ先の杖」この言葉を皆でもう一度考えましょう。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター