Memorial ConferenceIV DRS
Memorial Conference in Kobe IVからの提言(1999年2月20日)

 Memorial Conference in Kobe IVは1999年2月20日、神戸海洋博物館大ホールで会場にあふれるばかりの参加者を得て開催された。これまでのMemorial Conferenceでは震災を契機とした諸学会の活動、防災の進展、復興の様子を取り上げてきた。それを通じてこの災害が持つ多様な側面について学び、震災について正しく理解し、再びこのような災害を繰り返さないためにも異なる背景を持つ人々と語り合うことは大変重要であると考えてきた。

 今年のMemorial Conferenceでは子どもと震災のかかわりを全体のテーマとして取り上げた。午前中の会議では子どもたち自身が自らの震災体験を自分自身の言葉で証言した。財団法人阪神淡路大震災記念協会、兵庫県教育委員会、大阪府教育委員会の後援を得て実施した、「君たちの証言を残そうよ」という呼び掛けにこたえてくれた総計870編の証言の中からできるだけ多くの人に聞いてほしいと思った26編の証言が朗読された。そのすばらしさに会場の人々は感動した。午後のパネルディスカッションでは「21世紀を担う子どもたちに何を残すのか」をテーマに相談活動を通じて、遊びを通して、演劇を通して、音楽を通して子どもとのかかわりを実践してきた方々の活動が報告された。

 ニューフィルハーモニー・ジュニアオーケストラの子どもたちのすばらしい演奏が披露された。

 また、展示会場ではさまざまな団体の試みが展示された。

 今年の会議から得られた教訓は次のとおりである。

 すなわち

1.子どもたちの言葉は誠実で重く、鋭かった。どう対応すればいいのかわからないほど感動した。

2.震災を体験しないものにとっては震災体験は風化する。しかし、震災を体験した人に体験の風化はない。

3.光景、音、におい、寒さ、暖かさ。震災についての鮮明な記憶は当時5歳の子どもも持っている。そして記憶の鮮明さは50年を経てもなおあせない。

4.子どもたちは決して弱い存在ではなく、しっかりと現実を見つめ、人の暖かさに感謝し、人の役に立つことを決心していた。

5.子どもたちには勇気があり、失ったものを悲しむだけではなく、震災の経験を通して得たものは何かと問うていた。

6.震災は子どもたちの心に大きな傷を残した。その傷跡は消えにくいが、その傷をいやすさまざまな試みが家族、友だちをはじめさまざまな場で子ども自身も子どもと向き合う人々の間で行われている。

7.子どもは簡単には心を開かない。しかし、わかろうとする努力は子どもたちにも伝わる。

8.震災の体験は現在の公教育では教えない多くの人生の真実を教えてくれた。

9.言葉では表現しきれないもどかしさもある。音楽が表現するものもある。事後もできるだlけ幅広くさまざまなかたちで証言を残していかなければならない。

10.子どもたちも自分たちの経験や震災を通して得たものを人に伝えたがっている。大人はその場を用意しなければならない。

 最後に、来年のMemorial Conference in Kobeは神戸と東京で開催する。神戸では2000年1月22日土曜日に今年と同じく神戸海洋博物館で開催する。来年もご参加いただき、1年間の復興を見守っていただきたい。東京では2000年1月17〜18日に阪神淡路大震災をすんだこととして忘れるのではなく、忘れてはいけないことを整理して被災地外の人々に伝える。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター