Memorial ConferenceTOKYO DRS
東京宣言

 阪神・淡路大震災からまる5年がたちました.被災地に暮らす人にとっては,依然として震災の影響は多くの面に残っています.これまで復旧・復興に忙しく,この5年間を振り返る暇もなかった人も多いはずです.5年が過ぎようとする今,この5年間を総括しようという試みがありました.

 被災地外に暮らす人にとっては,もう阪神・淡路大震災は過去のことかもしれません.この震災は第2次世界大戦後,近代都市が体験した世界最大の自然災害です.その教訓は計り知れないものがあります.ところが,震災から2ヶ月後に起きたサリン事件のために,その後の復旧・復興の苦労はマスコミも断片的にしかとりあげなくなりました.そのため,震災の教訓を十分に学ばないままにこの5年間を過ごしてきたかもしれません.

 私たち「阪神・淡路大震災の教訓を世界と21世紀に発信する会」では,震災1周年目から毎年「メモリアル・コンファレンス・イン・神戸」を被災地で開催してきました.この会議は10年間継続しますが,中間年にあたる今年は,これまでのまとめを被災地外の人にも知ってもらうことを願って,「メモリアル・コンファレンス・イン・東京」を2000年1月17日・18日に建築会館で開催いたしました.

 2日間全体のテーマは「災害や防災についての素朴な疑問に答えよう」です.災害や防災についてわからないこと,腑に落ちないこと,知りたいこと,いろいろあると思うのです.そうした疑問を「ボクの不思議,私の疑問」,「神戸に汗したあの頃…お元気ですかみなさん」,「…・あの日・…・未来,おもいを音楽と言葉に託して」,「セキュリティ確保のヒミツ」,「災害復興を検証する−まだ神戸は終わっていない」,「社会全体の保険としての災害対策」の6つの側面にまとめ,現時点でもっとも信頼できる回答者に答えてもらいました.それをまとめて体系化することが,阪神・淡路大震災の教訓ともなると考えました.

 この会議を通してみなさんにお伝えしたい災害の真の姿には,次のようなものがあります.

1.多くの人が災害の怖さや悲しみを知らない.学校では教えられないし,経験をとおしてしか学べないものが多数あるからである.しかも,災害はまれにしか起きないので,災害を乗り切る知恵を世代を超えて身につける場を作ろう.

2.時間の経過とともに災害は,つぎつぎと姿を変え,新しい問題を投げかけ続ける.被災の意味は,人によって皆異なる.災害を一言で言い尽くすことはできない.

3.被災者の心は,亡くなった人,無くなったものをいつまでも忘れない.被災者の立ち直りとは,亡くなった人,無くなったものとの新しい関係を作り上げる努力を通して可能になる.

4.人の苦しみを知るには豊かな想像力がいる.人を助けるにも豊かな想像力がいる.相手の身に立って役立つことを考えることを,防災の基本としよう.

5. 今後被災地に生きる人の知恵として,覚えておいてほしいことが3つある.すなわち,むりしない,おしつけない,はずかしがらない,である.

 平成12年1月18日
メモリアルコンファレンス・イン・神戸 組織委員会


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター