Memorial ConferenceIV君の証言 DRS
「君の証言」

家族っていいなあ
藤田 佳奈 (神戸市立本山南中学校)

 「ドン。グラグラ。」
 一瞬だった。たった一瞬で私の家は傾いてしまった。私のおなかの上にもタンスが落ちてきた。でも、その時お父さんが私の上にかぶさってくれた。そのおかげで私は助かった。それにしても、私は運がよかった。なぜなら、丁度その前日、私はスケートで転んで右手を骨折していた。寝相が悪い私が、右手をできるだけ動かさないように、お父さんが、一緒に寝ていてくれていたのだ。だから、とっさにお父さんが、かぶさってかわりにタンスを背中で受け止めてくれたのだ。この時私は、とってもうれしかった。家族っていいなあ、と思った。もしあのタンスが私のおなかに落ちていたらと思うと、私はお父さんに感謝しなければならない。
 それはわかっている。わかっているけど、実行にうつせない?。
 私は、地震から三日後、もうすでに、疎開していた。親戚の家ではなく、お父さんの知り合いの家へ?。私たった1人で。とてもさみしかったし、家族も恋しかった。でも、今から思うと私はとても恵まれていた。小学校の友達も、先生もすごく優しかったし、気をつかってくれた。疎開先のおじさんやおばさん、お姉ちゃんも色々お世話してくれた。右手が使えない私の着替えを手伝ってくれたおばさん。一緒に学校に行ってくれたお姉ちゃん。今思えば、みんな本当の家族のように接してくれた。お別れの日は、涙が出てきそうなほどつらかった。でも、家に戻れるのは、とてもうれしかった。家に戻れるといっても、おじいちゃんの家だったけれど?。でも、お父さんと一緒に住めるということでうれしかった。地震の時、お父さんに助けてもらったような命だったから。
 しかし、今の私は、お父さんに反抗してばっかり。感謝を、体で表現しようと思ってもなんだか恥ずかしくて、ついつい反抗してしまう甘えん坊の私。でも、地震前の家に戻ったら、反抗しないようにするから。それまでは甘えん坊の私でいさせてね。
 地震。それは、予期せぬ出来事だった。あの恐ろしい地震。忘れてはならない出来事だと思う。それはとても恐かったけれど、その分友達も多くなった。家族の大切さや助け合う事の大切さを学んだ。地震。どんなに大事な事を学べても、やっぱりもう二度と起こってほしくないことである。でも、家族っていいなあ。


Research Center for Disaster Reduction Systems, DPRI, Kyoto University
京都大学防災研究所巨大災害研究センター