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京都大学防災研究所 Presents

近況報告

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興津 地震ザブトン体験&家具固定診断キャンペーン(2014年6月更新)

 新学期を迎え高知県四万十町興津地区での防災の取り組みも新しい一歩を踏み出そうとしています。これまで興津では住民一人一人が主役となる「個別避難訓練」をメインに行ってきましたが、来たる6月7〜13日、地震ザブトン体験&家具固定診断キャンペーンを実施することになりました。

地震ザブトンとは

 地震ザブトンとは地震を再現できるシミュレーターです。椅子の形をしていて、そこに座ると前にあるモニターの映像と共に、阪神淡路大震災や東日本大震災の揺れを体験することができます。この地震ザブトンは運ぶことができ小学校の体育館やオフィスでも使用可能です。
 この地震ザブトンを、6月7日興津小学校の体育館に設置し、小学校の児童はもちろん、他の住民さんにも本当の揺れを体験していただきます。これらの揺れを体験していただくことで、家具固定などの事前準備の大切さを知っていただくことがねらいです。


地震ザブトン(白山工業株式会社)


地震ザブトン体験の様子

家具固定診断キャンペーン

 多くの住民さんに地震ザブトン体験を通して、事前準備の大切さを知っていただいた後、家具固定診断キャンペーンを実施します。この診断は6月7日〜13日にかけて矢守研究室の学生である谷澤が、住民の中で希望者を募り、実際にお宅に訪問し行います。
 内容は「1.家具配置の確認(普段睡眠されるところや扉、通路に倒れる棚などはないか。)」、「2.もっとも危険な棚の固定(つっぱり棒+ふんばる君)」、「3.書籍の落下防止」、「4.テレビ、食器棚の固定」の紹介です。これらの家具固定診断に関する知識はNPO法人プラス・アーツさんにご教授していただきました。
 さらにこの家具固定診断に際し、住民さんに家具固定に関する質問を行い、今後興津で家具固定をさらに広めていく方法を考える足掛かりにしていきたいと考えています。
 次回の更新時には家具固定診断キャンペーンの成果を報告する予定です。


突っ張り棒での棚の固定


ふんばる君での棚の固定


書籍の落下防止

京都大学大学院情報学研究科 谷澤亮也

津波避難シミュレーションの完成と防災講演会について(2014年4月更新)

津波避難シミュレーション

 2014年2月、興津地区の津波避難シミュレーションが完成しました。このシミュレーションを使うことで避難に関する問題を分析し解決策を提案したり、住民さんに津波避難について自発的に考えていただくことを目的にしています。

 左上の数字は地震が発生してからの経過時間です。地震後100秒間は揺れのため住民は避難を開始できません。また右上の数字は高台へ到達した住民の人数です。ピンクの点は一般住民さん、緑の点は小中学生を表わしています。津波は南海トラフ地震で発生する最大のものを想定しています。シミュレーションで避難している人数は住民29名、小中学生46名の計75名です。

興津

シミュレーションの特徴

 このシミュレーションには2つの特徴があります。
 第1に住民さんを表す一つ一つの点の動きが、実際に住民さんに避難場所まで避難していただいたデータをもとにしていることです。私たちがこれまで行ってきた個別避難訓練の際に住民さん一人一人にGPSを持ってもらい、データを記録してきました。そのデータを使い避難シミュレーションを作成しています。
 つまり、このシミュレーションでは鞄に道具を詰め込んだりする人、近隣のお年寄りを助けに行かれる人、車で避難する人などが再現されています。このように実際に避難されたデータを使うことでより震災時に近いシミュレーションを作り出すことができ、また住民さんにも実際に自分たちで歩いた道であるため当事者意識が生まれやすいと考えられます。
 第2の特徴は、標準的な避難シミュレーションとともに、もしも避難開始が15分遅れてしまったらという「15分遅れバージョン」を作成した点です。標準的なシミュレーションでは揺れとともに避難を開始していますが、避難の準備が手間取ったり、避難に関する情報を待ったり、学校に子供を迎えに行くなどして避難の開始が遅れてしまう可能性があります。
 そこでこのシミュレーションを作成しました。15分遅れバージョンでは避難した75名の住民のうち9名が津波に追いつかれてしまうという結果になり、住民のみなさんに避難開始が遅れると危険だと認識してもらいやすくなっています。

興津

防災講演会

 2014年2月私たちは興津小学校で防災講演会を行いました。内容は上記の津波避難シミュレーションを使い、住民さんとともに津波避難について考えようというものでした。
 まず住民のみなさんに避難開始が遅れる様々な理由を考えてもらいました。家具の転倒や避難道具の準備が挙げられました。その後実際に15分遅れバージョンのシミュレーションを見ていただき、75名中9名の方が津波に追いつかれてしまう現状を踏まえながら、私たちから揺れたらすぐに避難するために必要な以下の3つのポイントを説明しました。
 まずは事前準備です。家具の固定や道具の準備、避難経路の確認などがあります。次に地震の揺れをきっかけに避難を開始することです。テレビなどで避難警報等を待っていては遅いです。2年前に同地域の全世帯を対象に行ったアンケート調査でも20%ほどの住民が情報を待つと回答していました。
 最後に津波てんでんこです。これは東北地方に伝わる津波避難に関する言い伝えで、意味は「地震が起こったらてんでばらばらに避難しよう」という意味です。つまり、親御さんが小中学校に生徒を迎えに行ったり、逆に子供たちが親の元へ向かったりせずにばらばらに避難を開始するということです。
 この講演会では、津波シミュレーションを使い、早期避難の大切さとそのポイントを伝えました。

興津

(京都大学大学院情報学研究科 谷澤 亮也)


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