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京都大学防災研究所 Presents

近況報告はこちら (2015年11月更新) 

茨城県大洗町での取り組み

 東日本大震災において、地震、津波、原発事故による風評被害という三重苦を受けている被災地は少なくない。茨城県大洗町はその一つである。東日本大震災当時、大洗町は4m高の津波に襲われ、町内の面積の10%もが浸水され、破壊的な被害を受けた。しかし、人的な被害は、地震によって亡くなられた方が1名いたが、津波による死者は発生しなかった。
 人的な被害が抑えられたため、復旧作業は2011年7月に終わったと言われている。この人口約1万8千人、漁業や観光業が盛んである小さな町にとって、最も深刻な問題は原発事故による「風評被害」である。その中で、住民は能動的に復興事業を行い、マスメディアとのインタラクションを盛んに行い、現在はアニメまちおこしの成功により全国に注目されている。

本研究プロジェクトは2012年10月から大洗町でフィールド活動を始め、住民に震災復興に関するインタビューを行うと同時に、現地の復興を応援する活動も行っている。
 例えば、2013年3月9日に、大洗町のボランティア団体「大洗応援隊」主催の交流の場「ほげほげカフェ」で防災ゲーム「クロスロード」ワークショップを実施した。このイベントは質的心理学会の東日本大震災のWGの活動の一環である。矢守克也先生と院生の李?ウが共同でクロスロードゲームを行った。参加者は日本各地から大洗を訪れた研究者、大学生、さらに大洗町の高齢者、主婦、小学生、自営業者、町議員、そして役場職員も参加した。
 さらに、取材者であった茨城放送のアナウンサーも一緒にゲームに参加し、意見交換を行った。例えば、「住民はこれ以上「風評被害」を受ける被災地と言われたくない」という意見があり、それに対してアナウンサーはマスメディアの立場から意見を述べたが、表現手法を反省する場面もあり、非常に白熱した議論となった。


↑2013年3月9日「クロスロード」@大洗町髭釜商店街 市民交流場『ほげほげカフェ』

 本プロジェクトは「大洗町漁業研究会」のメンバーともつながりがある。「大洗町漁業研究会」とは、現地の20代、30代の若手漁師が所属し、主に漁業PR、まちづくりなどの活動をしている団体である。震災以後、大洗町の漁業は大きなダメージを受けた。まず港、漁船、漁業組合が津波による被害を受けた。しかし、若手漁師を中心に、一刻も早く船を出したいとの思いがあり、震災の三日後から修復の仕事を始めた。まもなく漁に出る漁船もいたという。ただし、その後の漁の自粛による「実被害」、そして「風評被害」により、漁師も悩まされた。
 その後、漁師たちは積極的に町と連携し、食の安全を保障した上で、しらす祭、ホッキ祭りなど地元の名物をメインにする観光イベントを行った。その中で、「大洗町漁業研究会」のメンバーが、漁業体験を開催した。
 漁業体験とは、子ども、大人問わず、漁師と一緒に漁船に乗って、魚を取るという体験である。筆者も2013年6月9日のホッキ祭にて、漁業体験に参加した。漁業体験は大変興味深く、海の面白さ、漁師の辛さも伝わってきた。実際どのようなことがあるのか、ぜひ下記の動画を通してご覧いただきたい。

Youtubeのホームページへ http://www.youtube.com/watch?v=EguQczeCASE
(上記リンクは外部のサイトへ移動します。)


↑2013年6月9日 大洗町港 漁業体験イベント 船乗るぞ!


↑さー海へ


↑大洗の名物 生しらす丼

最後に、これからも大洗町で長期的なフィールド活動を行っていくことにより、おいしい食べ物、やさしい人々と出会い、震災の難関を乗り越えようとする強い町の人たちと仲よくなれたらと思う。

(京都大学大学院情報学研究科 李フシン)

   

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