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京都大学防災研究所 Presents

近況報告

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夜間津波避難訓練を実施しました。(2015年5月更新) 

 昨年の12月13日に、興津地区全体で一斉に夜間津波避難訓練を実施し、307名の住民の方が参加されました。

夜間津波避難訓練チラシ(個人名および連絡先は伏せてあります)


なぜ夜間に訓練を?

 こういう類の避難訓練は、多くが「昼間に」実施されます。しかし実際のところ、災害は必ずしも「昼間に」起こるとは限りません。
 興津地区でも揺れが生じた地震を考えてみましょう。最近でしたら2014年3月14日の伊予灘地震が挙げられますが、これは午前2時6分ごろに発生しています。また過去の地震でしたら、昭和南海地震が午前4時19分ごろに発生しています。しかし興津地区では高齢の方が多くいらっしゃる地区でもあり、夜間でも無事に避難できるのかわからないという声が多く挙がっていました。
 そのため、興津地区ではより現実の災害に近い形での津波避難訓練として、夜間津波避難訓練を実施する運びとなりました。

訓練概要

 訓練は、興津地区の自主防災組織が主催の形で実施いたしました。
 訓練のスタッフとしては、自主防災組織のメンバーだけでなく、地区の消防団、四万十町役場、高知県庁、窪川警察署、四万十清流消防署、矢守研究室、総勢60名ほどの方々が参加されました。
 18時に「大津波警報が発令されました」という放送がかかると、住民の方々は一斉にお宅から各々が考える最寄りの避難場所まで避難しました。住民の方々は道中出会った人同士で声を掛け合い、しんどそうな人に対しては励ましの声をかけながら、あるいは世間話もしつつ、賑やかに避難場所に向かって歩いていきました。
 訓練自体は18時半ごろに終了し、その後訓練前に本部で説明を受けたスタッフは本部に戻り、使用した機材を回収いたしました。


夜間津波避難訓練の様子


夜間個別避難訓練

 また、今回の夜間訓練の実施にあわせて、「夜間個別避難訓練」という避難訓練も実施いたしました。
「個別避難訓練」とは1人1人個別に実施する避難訓練です。協力者1人に焦点を合わせてその方と一緒に避難しながら、実際に避難することで出てくる危険な箇所や個人の抱える問題点などを記録し、後日「動画カルテ」という形で協力者ご本人にお届けすることで、その方の津波避難に役立てていただこうという試みです。(詳しくは コチラを参照。)
 そして今回は、その個別避難訓練の夜間バージョンとして、夜間個別避難訓練を15組21名の住民の皆様と一緒に実施いたしました。
 この訓練を実施したことによって多くの協力者の方々で浮き彫りになったもののひとつが、夜間ならではの問題です。ここでひとつ具体例を紹介します。
 ある夫妻の方は昼間の避難訓練ではあらかじめ用意しておき、開始時間になったらすぐに避難できていました。
 しかし今回の訓練では、さあ避難しようとなっても、用意していた懐中電灯2つを紐で互いに縛っており、しかも真っ暗なため紐を解くのに時間がかかったり、家を出ようとしても当日は非常に寒かったこともありトイレに行ってしまったりしました。その結果、昼間であればもう避難場所に到着するころになってからようやく出発できる、ということになりました。
他の協力者の方々も、夜間なため道があまり見えず歩きづらい、足腰が悪ければどうすればいいのか、といった問題点が明確なものなりました。また避難中に「一緒に逃げよう」と声をかけあう、あるいは実際の災害を自分なりに想定しつつ避難する方もいらっしゃいました。


夜間個別避難訓練の様子


 そして、夜間個別避難訓練に参加された方々だけではなく、今回の夜間津波避難訓練に参加された方々の間では、暗さに関するものだけではなく、寒さや足腰の弱い方をどうするかに関する問題点や改善点の指摘も多くなされました。
 これをきっかけにこの興津地区における津波減災の活動がより進んでいくよう、私たちも住民の方々と共に考えていきたいと思っています。

京都大学大学院情報学研究科 野嶋太加志


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