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京都大学防災研究所 Presents

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近況報告

地震学×減災学 対話講座 第1回を開催いたしました。 

 2014年9月27日(土)、高槻市役所において、阿武山対話と題する対話講座の第1回目が開かれました。これは、地震学・減災学に関して、その分野の専門家と一般の人々が対話をしながら、相互に理解を深めていくこと、また、その研究に阿武山観測所が果たしてきた役割や今後の展望に関して、共に考えていくことを目的としています。

 これは、阿武山観測所のサイエンス・ミュージアム構想に基づくものです。2014年7月5日をもって、阿武山観測所は耐震改修工事のため一時休館となっています。そして、2015年度のリニューアルオープンの準備期間にあたる2014年度後半に、高槻市内で会場をお借りし、「Abuyama dialogues=阿武山対話」と題する学び合いの機会をシリーズで設けています。ここでは、これまで観測所を通じて知り合った方々と、新たに出会う方々ともつながりを深め、防災・減災につながる地震観測の最先端や、減災社会実現のために取り組まれる最新の事例を学び合い、阿武山観測所のリニューアルオープンに向けて皆さんと共に考えていきます。

 第1回目の今回は、「内陸地震の謎なぞなど」というテーマで、京都大学防災研究所教授で、阿武山観測所所長の飯尾能久先生による講座が行われました。これには、阿武山観測所のボランティアサポーターさんを含む、多くの方々にご参加いただきました。



 1995年兵庫県南部地震当時、内陸地震がどうして起きるのかは、ほとんどわかっていませんでした。近年、新しい考えが発表されて来ていますが、一般的には馴染みが薄いのが現状です。そこで、内陸地震の解明に向けて取り組む最新の事例を紹介し、それに阿武山観測所や満点計画がどのように関わっているかについて、お話がありました。

 現在主流である「地震の活動記録に基づいた予測」の特徴やその限界と、まだまだ駆け出しではありますが、大きな可能性を秘めた「地震の発生原因の理解に基づく予測」についてお話されました。飯尾先生は「地震の発生原因の理解に基づく予測」の研究をなさっていて、断層の直下にやわらかいところがあり、これが内陸地震発生の要因と考えられる、とのことでした。この解明には、やわらかい部分が具体的にどこかを突き止める、また、その直上の、力が集中すると思われている部分が本当にそうなのかを確かめることが必要です。そのために満点計画が行われ、たくさんの満点地震計を配置し、地球内部の構造を理解しようとしているのです。



 難しいお話でしたが、参加者の方々が真剣に話を聞き、内容を理解しようとしている姿が印象的でした。多くの質問が寄せられたので、第3回の飯尾先生の講座に向けての良い材料となればと思います。
 次回、第2回の対話講座は、2014年11月15日(土)、防災・減災に関して、京都大学防災研究所教授の矢守先生がお話致します。

京都大学大学院情報学研究科 日岡惇

近況報告

耐震改修による一時閉館を記念する「最終見学会」を開催いたしました。

 2014年7月5日に、阿武山観測所の「最終見学会」という名前で、耐震改修による一時閉館を記念するイベントが行われました。この日の参加者は約300名と、近年では最も来場者数の多い1日でした。
 イベントの中身は各種の学習プログラムで、これまで3年3か月の「阿武山オープン・ラボ」と2年間の「ボランティアサポーター」の活動の節目を祝う意味を込めています。阿武山に眠っていた資源を生かし学習の場を再構築するこれらの試みには、専門家だけでなく自発的に参加したボランティアサポーターが深く関わっています。その試行過程で阿武山観測所が中心の学習の場に蓄積されたものを、講師の配置だけでなく運営技術や各種設備も含めて、その容量限界まで使い切る1日でした。

 学習プログラムの1例、「岩石セミナー」は観測所に眠っていた鉱物標本をヒントに、ボランティアサポーターが構成したメニューです。地質学の系譜から地震学と防災を解説する観点は、地質学の基礎教育を持ったこのプログラムの担当サポーターならではのもので、歴史の中で阿武山の専門家の関心事では無くなっていったものです。
 この他にも、「建築ミニツアー」や「自然探索ガイド&ツアー」、またメインの「歴代地震計ガイドツアー」や所長らによる「『満点計画』―地震研究と防災教育のコラボ」等のプログラムが並行して行われました。

 1日の学習プログラム終了後は、懇親会が行われ関係者間での交流が行われました。阿武山の草刈ボランティアから防災研究所の所長や経理課長、前述のボランティアサポーターや定期的にここで勉強会を行っているマスメディア関係者など、阿武山を接点に持つ方々が一堂に会する一時になりました。

 この日を境に阿武山観測所での活動は休みに入り、1年間は耐震改修の工事が行われます。新たな学習の場の揺籃期は、活動初期の活気に溢れたものになったと言えるでしょう。ただ、阿武山観測所が持つ役割が変化するという意味では、本格的な活動はこれから始まるとも言えます。このコミュニティがそれぞれの参加者にとって本当に必要な場となれば、それぞれに地道な活動を続けることができて、この日のようなお祝い事も繰り返しあるのではないでしょうか。

近況報告

平成25年度の満点計画授業の最後の回に行ってきました。

 平成26年2月5日に、下山小学校で満点地震計のメンテナンスを行いました。雪景色の中、生徒1人が1パートの役割を担ってメンテナンス作業を行いました。作業をしている生徒以外は教室で待機という状況でした。この日1人1人が行った作業の様子を撮影し、「満点計画とは何か」、「どのように地震計のメンテナンスを行うか」を後輩に伝えるメッセージビデオを作りました。

 その5日後。2月10日に下山小学校の6年生が阿武山観測所訪問を行いました。
 よく晴れた午後にバスで阿武山観測所に到着。満点地震計を開発した研究者の飯尾先生と対面し、阿武山観測所や地震学についての疑問をやりとりしながら、1年間の学習をふり返る特別授業を行いました。また続いて、ボランティアサポーターが館内の案内を務め、生徒に地下の歴代地震計や屋上からの展望を紹介しました。


阿武山観測所の屋上からの眺めを楽しむ生徒たち


 2月24日には、根雨小学校で本年度最後の防災学習を行いました。「災害が起こったとき、私たちに何ができるか」をテーマに授業を行いました。生徒自身は大きな地震災害を経験していません。しかし根雨は14年前に鳥取県西部地震を経験している地域だけに、年4回の授業を進めていく中で災害に対する関心の高さが現われてきたと言えます。
 計2時間の授業は、「東日本大震災で何が起こったか」、「地震そのものについて」、「地震が起こったとき何ができるか」という内容で進めました。
 授業の最後には筆者からの卒業する6年生へのメッセージとして、
「日本にいる限りは、いつどこで大地震が起こってもおかしくない。自分で大事なものを見つけて、それを守ろうという姿勢で生きていくと、地震にどう対応するかという問題がまたどこかで現われてくる。その時の答えは1人1人が見つけてほしい。」
 という内容を伝えました。14年前の地震の教訓が、今後思わぬ形で生きてくるかもしれません。


根雨小学校での授業の様子


京都大学大学院情報学研究科 岩堀卓弥

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