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京都大学防災研究所 Presents

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近況報告

京都府京丹波町の下山小学校で、小学校の地震計のメンテナンスを行いました。

 2014年11月26日に、京都府京丹波町の下山小学校で、小学校の地震計のメンテナンスを行いました。
 まずは教室で、小学校の先生が地震計のメンテナンス方法について復習を行いました。


 続いて、校舎裏の地震計のところへ向かい、小学校の先生が手助けしつつも、生徒だけでの地震計メンテナンスを行いました。


 作業は順調に進んでいたのですが、開始から約20分後、GPSによる時計合わせが完了すればほとんどメンテナンスは終わりという段階で、急に作業が進まなくなります。
 一同を不安と緊張が包み始めます。「最初から間違ってたんじゃないの。」「いや、うまくいってるかもしれん。」「この時間意味ないやん。」「あの顔(筆者)見てみ、たぶん大丈夫やで。安心して待とう。」と、大人顔負けのやりとりをしつつも、時間とともに不安は募る一方です。
 開始から約40分後、何の前触れもなく最後のCHECKランプが点灯し、急に安堵が広がります。後はスイッチを一つだけ押して片づければメンテナンス完了。振り返ると、ただ待つだけという何とも掴みどころの無い時間を過ごすのが一番のプレッシャーになっていたようです。逆に言えば、小学生だけでも順を追ってメンテナンスの手続きをする能力は十分のように見えました。


(筆者は少し離れて見ていたため、これは参考画像です)


 トラブルのような経験を1つ乗り越え、無事に6年生だけで地震計のお世話を完了したという自信は共有されたことでしょう。今回はメンテナンスの仕方の復習も小学校の先生が担当しているので、メンテナンスの方法も下山小学校に定着する傾向にあるようです。
 「(メンテナンスを)他学年にも伝えたい」「(後輩にも)頑張ってほしい」と、話した6年生もいました。カメラの前のインタビューで思わずそう答えてしまっただけだとしても、自分たちの地震計で、自分たちの足元の大地の観測の一端を担っていることに、誇りを感じ始めているように受け取れます。

京都大学大学院情報学研究科 日岡惇

近況報告

京都府京丹波町立下山小学校で、今年2回目の満点計画授業を行いました。

 2014年9月30日に、京都府京丹波町立下山小学校で、今年2回目の満点計画授業を行いました。
 授業報告:まず教室で、前回の授業と地震計メンテナンスの映像を使い、第一回授業の復習をするとともに、メンテナンス作業の仕方について学習しました。
 続いて、校舎裏の地震計のところへ向かい、生徒だけでの地震計メンテナンスに挑戦しました。小学校の先生が手助けし、防災研のスタッフは手を出さずに見守る中、無事に6年生だけで地震計のお世話を完了しました。


 この後は、下山小学校の裏の坂を上り尾長野地区まで歩きながら、露出した岩盤や河岸段丘の地形を素材に、下山周辺の大地の形成について学習しました。


 最後に、12月の第3回授業に向けたまとめを行い、この日の授業を終えました。

意義:これまで小学校の先生だけで地震計メンテナンス作業をする際に機器の不調でトラブルが起こることがあり、そのトラブル処理のプレッシャーが大きいためか、メンテナンス作業が自主的な役割として小学校に定着するには抵抗がありました。しかし、今回は生徒同士のやり取りの中で柔軟に手順を探しながら、無事一通りの作業を完了できました。

 これまでの問題は、メンテナンスの手順の複雑さではなく、単に定期的なメンテナンスの習慣が確立していなかったことなのかもしれません。今回タイミングが熟して、「下山小学校の地震計」という自信が芽生えたとすれば、直接作業をした6年生だけでなく、小学校の先生や防災研のスタッフにとっても、改めて物言わぬ地震計を受け継ぐ意義を考えるきっかけになるでしょう。


 もちろん地震計のメンテナンス作業だけで災害から身を守る知識がつくわけではないことは確かなのですが、この日の授業が達成感とともに将来の記憶に残る共同作業だったことも間違いないと思います。
 いつか1人1人がそれを手がかりに、自分は災害に対してどうするのかと考え始めるとすれば、それでは防災教育として遅すぎると悲観することはないと思います。少なくともこの学習プログラムが、教える内容はほんのきっかけの部分だけでも、あとは人が育っていくのを待てる、地に足のついたものになりつつあるようです。

近況報告

地震学×減災学 対話講座 第2回を開催いたしました。

 2014年11月15日(土)、高槻市役所において、阿武山対話と題する対話講座の第2回目が開かれました。これは、地震学・減災学に関して、その分野の専門家と一般の人々が対話をしながら、相互に理解を深めていくこと、また、その研究に阿武山観測所が果たしてきた役割や今後の展望に関して、共に考えていくことを目的としています。

 第2回目の今回は、「地震防災を“ふだん事”にするための工夫とは?」というテーマで、京都大学防災研究所教授で、阿武山観測所教授の矢守克也先生による講座が行われました。
 前回の反省点であった、対話になりにくかったということを踏まえ、今回は、予め参加者から頂いた質問・意見をもとに、それに関連する形での講座となりました。



 大切だとわかっていても、滅多に起きない大地震への備えはおろそかになりがちです。けれども、その壁を乗り越えて、地震防災を“ふだん事”、もっと身近なものにするための試み・工夫も各所で始まっています。

 今回は、具体的な防災のノウハウを伝えるのではなく、防災・減災に関する取り組み方の視点から、一般に防災・減災のスタートラインと考えられている大前提、常識的な思考を根本的に問い直すということをコンセプトに、各地で行われている最新の事例を交えたお話がありました。
 その上で、誰もが当事者となるこれからの防災・減災の進め方について、対話を通じて理解を深めました。「自分の命は自分で守る」といった、普段あたりまえだと思っている事柄も、本当にそうなのかと疑ってみることで、新たな一面が見えてくるということが共有されたように思います。また、講座の途中に参加者からの質問・要望と、それに対する先生の受け応え、新たな事例の紹介があり、より双方向の対話が実現していたと思います。



 最後には、一般の人々は専門家と共に、研究の一翼を担っていくべきだし、現にその萌芽は見られているというお話がありました。
 現在、地震学・減災学においては、研究をする側と、その結果を受け取る側という明確な分類が前提となってしまっています。しかし、これによる弊害もあるため、専門家・自治体の行っている根本的なところから、一般の人々が関わるということも必要ではないかとの考えが紹介されました。
 それに伴い、地震学の研究を推進する場所であると同時に、地震学や減災学に関して一般の人々に学んでいただく場としての阿武山観測所の意義が改めて確認されました。

 また、下山小学校での満点計画の事例がビデオで流され、最新の研究の一端を小学生が担う姿が紹介されました。更に、新たな取組として現在進められている鳥取県での事例では、地域のコミュニティが、研究を支える新たな人々になりうる可能性も示されました。これらを通じて、地震学・減災学という専門的なものを、一般の人にもわかりやすくお伝えする場になったと思います。

 次回、第3回の対話講座は、2015年1月31日(土)、地震学に関して、京都大学防災研究所教授の飯尾先生がお話致します。

京都大学大学院情報学研究科 日岡惇

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