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京都大学防災研究所 Presents

第4回 畑山 満則さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「人に寄り添う情報処理」(2ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

GISとがれき処理-原点となった阪神・淡路大震災の経験

住田)人を救う、人を守る、そして人を支える、そんな情報処理システムの構築に取り組んでいる畑山さんですが、研究の原点になったのが阪神・淡路大震災だったということで、ここからはそのご経験や、今も続く東日本大震災の被災地支援、そして将来の夢についてもうかがっていきたいと思います。
そもそも、畑山さんが情報処理の研究を志すようになった経緯を教えていただけますか?

畑山)大学生のときはロボットをつくりたかったんです。修士まではロボット工学を専攻していました。私たちの世代は、実は最初のガンダム世代なんです。私が小学校6年生の時にガンダムの映画が公開されたので、ガンダムが大変盛り上がっていた時ですね。

住田)ガンダムっていうのは、あの大きなロボットに自分が乗り込んで、それを操縦するわけですよね。

畑山)同級生みんなに、どうしてロボット工学の分野に入ったのか聞いてみると、全員ガンダムがつくりたかったということが分かったんですが、一方で、先生がたはみんな、アトムがつくりたくてロボットはじめた人たちなんですよ。「アトムというのは、実は悪いことをしない。実は人口頭脳をもっていて、善悪の判断ができるようになっているっていうのが違うんだ」、という講義を受けたりするんですね。

住田)そのロボットというのものに、最初の志の根っこがあるわけですね。しかし、地理情報の方に展開されましたよね。

畑山)はい、その後一度企業に就職するんですが、就職した先で、この地図を使う「地理情報システム」っていう研究と、その防災への応用をやっていました。

住田)地理情報システム、GISともいわれるそうですが、それは具体的にどういうものだったんですか?

畑山)地図をコンピュータの中に表現するようなシステムですね。当時は、GISといっても誰もわからなくて、カーナビですっていうほうが分かりやすかったんですが。私が働いていたところも、カーナビのシステムを行政に役立たせるようなことをするにはどうしたらいいかっていうことを検討していまして、その中で最先端のものをつくっていました。
 それが94年のことで、あけて95年1月に阪神・淡路大震災が起こりまして、防災への応用をやっていた関係から、実際被災地に行って、なにかお役に立てることがあるんじゃないかということで、活動したのがこの防災研究のきっかけになっています。

住田)1995年の阪神・淡路大震災。ご出身も大阪で、やはり他人事ではないと、いう状況だったようですね。

畑山)そうですね、震災が起きたときは東京にいたんですが、弟が神戸で働いていたんです。すぐに連絡がつかなかったので、弟の安否が非常に気になったまま会社に行ったら、災害支援の活動をするシステムを組もうという提案されまして、多少の不安を抱えながらも、被災地のためになれるのであればと思って参加させていただきました。

住田)被災地にはどれくらいの期間入ったんですか?

畑山)私は震災から2週間くらいしてから、被災地に来まして、あちこちの方に、こういうシステムがあるけれども、なんか使い道がないですかっていうことを聞いていました。

住田)それでたどりついたのが、長田区役所だった?

畑山)はい。建物被害が一番激しかった長田区で、倒壊家屋の解体撤去の業務があまりうまく進んでいないので、ぜひそこでお手伝いをしてほしいという話がありまして、それで長田区に行くことになりました。

住田)長田では大きな火災も発生しましたが、現地に着かれたときはどんな様子でしたか?

畑山)そうですね、もう唖然としたとしか言いようがないんですが、区画ごと建物がなくなっていて、それは火災でなくなっているところもありますし、倒壊でなくなっているところもあるんですが、そういうところを目の当たりにすると、もうなにか、あんまり物を考えられなくなりましてね、唖然としたっていう感じですね。

住田)一方で、区役所はかなり混乱していた?

畑山)そうですね。当時がれきの撤去を行政が引き受けるということは、今ほど受け入れられていた話ではなくて、初めての試みだったんですね。それで、区役所の方に聞くと、受付開始の初日には、区役所の中すべてが申請者の方でいっぱいになって、さらに、外側にも何重にもひとが渦巻いていたと。
 そこで、さばけないので、整理券を配って、帰ってもらったんですって言われてまして、これをなんとかさばかないと長田の復興はないと思いました。

住田)それにどのように地理情報システムを組み合わせていったんですか?そして効率はどのようにあがったんでしょう?

畑山)地図のシステムを入れてですねえ・・・

住田)今ちょっと画面に出してもらっています。ちょうど1軒1軒の区画がある住宅地図のような画面ですね。

畑山)住宅地図ベースで、解体申請のあった家を色塗りしていくというシステムをまずはつくりました。

住田)黄色の斜線が入っているところ、赤い丸の入っているところ、というように1軒1軒マークがついています。

畑山)そうですね。マークごとに意味を変えたんです。「申請を受け付けた」、「すでに業者に発注した」、「同意書を待っています」というように、それぞれステータスがあります。問い合わせに対して、現在どの状態にあるのか答えてあげるのが非常に重要だったので、そういういくつかのカテゴリにわけて管理するということを提案しました。

住田)がれきの撤去が済んだのかどうかということを、例えば選択ボタンを押すと、まだのところだけ、ぱらぱらぱらぱらっと色がでるとか、そういうこともできるわけですか?

畑山)もちろん色ごとに表示もできます。すでに解体済みのものもある種の色にしてあります。

住田)特定のカテゴリーのものを抜き出したものが地図上に見えてくるわけですか?

畑山)そうですね、最終的には今日は何件こなしたとか、今月どのくらい終わったといった集計もこのシステムからやっていました。



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