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京都大学防災研究所 Presents

第4回 畑山 満則さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「人に寄り添う情報処理」(3ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

GIS導入の意義は効率だけではない

住田)本当の紙の地図にいちいち塗って、1個2個と数えるより、はるかに速く進みますよね。

畑山)そうですね、数え間違いもないですし。しかもみなさんお疲れなんですよね。そういう時に、このような作業をするとミスも多くなりますので、機械的に出来る部分は機械にやらせるということを考えていました。

住田)がれきの解体や撤去の情報処理が早くなったことによって、カウンターでの市民の方との接し方も変わってきたんですって?

畑山)そうですね、われわれも最初は、とにかく迅速化とか効率化とかを考えてシステムをつくっていたんですが、実際にいれてみますと、行政の人たちがやっていた事務処理を、バックヤードでコンピュータでやらせるようになっちゃったんで、職員の方に時間ができたんですよ。
 そこで来られた被災者の方と少しお話しをするようになったんですね。そうするとやはり被災者の方からすると、一言聞いてもらえたという気持ちがあって、役所の対応がよくなったという評判が出たりしました。

住田)一緒にこの町を復興させようっていう気持ちにお互いなっていくということですよね、余裕ができると。

畑山)あとからいろいろ検証してみたんですが、やはりその効果が一番重要だったんではないかなと思っています。
 本来、役所の人たちは地域の人たちと一緒に復興を目指していく必要があるんですが、事後処理のために復興に向けての話し合いがなかなかできていなかったのが、少しずつでも話していけたことで、復興を加速させたという意味もあるんじゃないかと思っています。

住田)現場から話を聞いて、システムを完成させるまでにどれくらい時間がかかったんですか?

畑山)これをやってくださいって言われてから、システムを組んだのは2週間くらいです。
 実は、最初に現場を見ずに私がつくったシステムはほとんど使われていません。その後、現場で作業を手伝いながら、毎日行政の方々がどういうことをやっていられるのかとかという動きを、ちろちろと見ながら、その人たちが必要と思われる機能をつくっていったんですが、そうやってつくったシステムがつかわれていっていますね。
 情報システムを組む時は、その現場で今起こっていることに対して、問題を見つけて、それを解消していくという形でシステム開発をしていかないと、災害の現場ですぐにつかえるようなシステムにはならないんじゃないと思っています。

住田)なるほど。「なるべく早く立ち上げてほしい」、「早くなんとかしてほしい」という時間と追いかけっこの中で、そのハートを失わないように、システムと結び付けていくということが大切なんですね。では、神戸というのは、畑山さんにとって、非常に大切な場になったんですね。

畑山)そうですね、もちろん人としても育てていただきましたし、研究者としても、ここが出発地点になっています。ここでつくったソフトウェアは、もちろん研究価値も非常に高いものです。
 最先端の技術でつくっていて、しかも災害時には、どこでも無償で使っていただけるという形で提供できるようにしています。「DiMSIS」という名前なんですが、神戸市などと協力してソフトウェアにまとめています。

海外での支援-トルコ語のソフトウェア

住田)このあと畑山さんは研究者の道を歩んでいかれるんですが、海外での支援もされているんですよね?

畑山)そうですね、1999年と2000年に、トルコで大きな地震が2回ありました。
 その両方で被災したデュッゼというところがあるんですけれども、そこに阪神・淡路の時の経験として、こういうものがありますよという例を現地の役所に持って行ったところ、ぜひ使ってみたいという話になりまして、いくつか支援のソフトウェアをつくったりしていました。

住田)トルコのまちの地図を画面に落とし込んでやるわけですね。うまくいきましたか?

畑山)そうですね、ソフトのつくりとか、やり方などは、割とうまくいくんじゃないかと思っていたんですが、実は言語に問題がありまして。
 われわれ、外国でやるから英語でつくれば大丈夫だろうということで、英語でつくって持って行ったんですけれども、トルコの田舎町でしかも行政の人っていう話になると、英語はしゃべれる人ってほとんどいなかったんですね。みなさんトルコ語しかしゃべれないということで、現地の通訳の方に手伝って頂いて、全部トルコ語にシステムを書き換えました。

住田)ははあ、それはトルコのみならず、日本でもそうですよね。英語のバージョンがあるから使えって言われても、ちょっとそれは・・・。

畑山)やはりヨーロッパだと英語でもいけるんですが、アジアの国々を支援しようと思うと、やはり現地語を重要視しなければならないということを考えさせられた話ですね。

住田)このDiMSISという畑山さんがつくられたシステムは、いろんな専門家がどんどんバージョンアップしていくものなんでしょうか。

畑山)そうですね、いろんな場で使えるベースになっていますので、地図ベースでやりたいことがあれば、その場で新しくニーズにあったものをつくっていって、支援につかっていただくという形でつかわれています。



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