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京都大学防災研究所 Presents

第4回 畑山 満則さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「人に寄り添う情報処理」(4ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

東日本大震災の被災地での支援-養殖業の再建-

住田)そんな畑山さんですが、今、東日本大震災の被災地でも、さまざまな取り組みをしていらっしゃるんですよね。

畑山)そうですね、いくつかの罹災証明の発行システムをつくったりもしてみたんですが、今実際に動かしているのは、宮城県の南三陸町の志津川湾で、養殖漁場の復興支援を、このコンピュータをつかって支援しています。

住田)今コンピュータの画面を出していただきました。養殖産業ということですから、湾の中にイカダをはって、その下に養殖のワカメなどいろんなものをつるしていくわけですが、写真では、何か海に黄色いケーブルのものを沈めていますね?

畑山)この先には、水中の状況を探査できるロボットが動いています。

住田)次の写真には、なにか海底に沈んでいるものが映っていますね。

畑山)これは自動車だと思うんですが、海中に引き込まれたがれきが、どこにどういうふうに分布しているのか、ロボットをつかって調べています。

住田)画面に、青いポイント、緑のポイントといった地理情報が点々とあります。この海底に物が沈んでいるということですか。

畑山)そうですね、海底の状況を示しています。

住田)なるほど。これが、養殖業のみなさんの復興支援に、どのようにつながっていくんですか?

畑山)最初は湾の中ががれきでいっぱいで、養殖業を再開することができるのか不安だということだったので、こういうロボットを使って、湾の中を調べてみたんですが、思ったほどがれきがないということがわかりました。意外と早く養殖が再開できるんじゃないかと結論づけられたんですよ。
 ただ養殖をはじめていって、海の状況が、やっぱりそうはいっても変わっているということがわかってきました。例えば、これまで、ワカメの種がとれた場所、ワカメだけではなくって、なにか養殖をするものの元の種っていうのをとる場所がいくつかあるそうですが、そのとれる場所が変わってしまったと。この種をとれる場所が変わってしまうということは、ものが育つ場所が変わっているということなんで、漁場はそのままですけれども、中でつくるもの自体を今後変えていったほうがいいんじゃないかという話があります。

 せっかくですから、復興を機に、その編を少し再編して、どの辺でどういうものが多くとれそうなのかということを調べながら、養殖業を再興させていきたいという話があります。DiMSISという地図のシステムは、普段は町中の地図でやるんですが、今度は海の上の地図をつくろうということで支援させていただいています。
 あともうひとつは、災害のときに船がどのように逃げるかというですね、不安も多かったそうで。

住田)いざ津波警報が出た、海上でどう逃げるのかということですね。

畑山)航路を、つまり船が通れる道を従来よりもちょっと広めに広げ直したいという話があって、それは、実は漁場の再編みたいな話なんです。そういう話は、こういう地図を使っていくと、非常に漁師さんにも説明がしやすいということで、これは割と期待していただいています。

住田)なるほど、こうしてみますと、最初にみた高知県黒潮町の陸上の地図と同じように、海上でも、いろんな場所でも、地理の情報、地図の情報って大切ですね。いろいろ、みえてきますね。

畑山)はい、いづれにしても避難というものは、どこにどう逃げるかで決まってきます。渋滞っていうのは、なにか人が一緒に集まるところができて、そこがボトルネックになって、そこの後ろに連なっていっちゃうという現象でおきるので、そういうことが起きそうなところを事前にコンピュータで調べて、事前に対策を練っておくことが、共通した話になるんじゃないかと思っています。

研究の夢

住田)地図上の点が、もし自分だったらこの行動じゃだめだと。じゃあ、どうしようかと考えるのは、それぞれの市民であるということですね。では、最後に、畑山さんの研究の「夢」、これからの夢というのを、教えていただきたいんですが。

畑山)ちょっと抽象的になるかもしれないですけれども、こうしたコンピュータ技術だとか、あるいはロボットもちょっと出てきましたけれども、そういう最新の機械技術というものの社会への実装という問題があると思うんですよね。

住田)実装というのは、実際に装備する、組み込んでいくということですか?

畑山)社会でどのように使っていくかという話。これは河川の土砂崩れの現場なんですが・・・。

住田)今、現場の写真が出ていますね、画面に。

畑山)いわゆる土砂ダムができています。

住田)はい、土砂にさえぎられてダム湖ができていますね。

畑山)役所の人たちに話を聞きますと、作業現場よりも、土砂崩れの跡地を見たいという話があります。

住田)はい。

畑山)土砂災害の跡地をみようと思うと、土砂崩れがおそった場所に・・・

住田)踏み込まないとだめ?

畑山)カメラを設置しないと見えないんですね。それは結局危険を伴うと。それで、考えついたのが、ロボットにこういうところに行かせようということなんです。人は安全な場所でロボットを遠隔操縦して、現地の状況の情報を得ると。
 それで、危険を判断していただいて、危なければ逃げていただくというようになっていくと、災害対応のために活動していて亡くなられる人の命を救うことが出来るんじゃないかなと思っています。
 これまでは、地図の上に落せたものだけで考えていたんですが、これからは、地図の上にデータをさらに増やしていくようなものも必要で、それも災害時に行政や被災者の方が見たいと思うものが見れる、知りたいと思う情報を知れるものが必要ではないかと思っています。

住田)その危険な場所に分け入ってでもその情報をとってくると?

畑山)そうですね。

住田)畑山さんが手がけてこられた地図の上に落とし込む地理の情報システムと、そこに実際に行って情報を集めてくるシステム、人を助けることが出来るかもしれないロボット、このふたつの夢がともに花を咲かせていく、そういう感じがしますね?

畑山)そうですね、少なくともこの東日本大震災で、そういう技術が使えそうだという芽は出たと思うんですね。あとは、南海トラフ巨大地震が来ると言われていますけれども、その地震の時に、今度は、「あれがあってよかったね」と言われるような状態まで研究としてブラッシュアップしていきたいと思っています。

住田)今日はどうもありがとうございました。

畑山)はい、ありがとうございました。



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