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京都大学防災研究所 Presents

第7回 煖エ 良和さん(京都大学 防災研究所 准教授 ※2014年2月1日より 京都大学大学院 工学研究科 准教授)

「耐震工学に、誇りと志を」(1ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

“酷道”満載「道カード・プロジェクト」

住田)土木がご専門の高橋さんの研究室におじゃましています。よろしくお願い致します。

高橋)お願いします。

住田)いまテーブルの上には、トランプくらいの大きさのカードに、カラー写真が印刷されたものがありますが、これは全部国道の写真なんですね。通行止めになって、むこう側にはうっそうと草が茂っている国道とか、あと、これは階段ですよね、車が通れないけれど、国道なんですね?

高橋)車がと通れない有名な階段、階段国道といわれるものです。

住田)そうですか(笑)そのほか、もうほとんど朽ち果てたような国道とか、いっぱいそういう写真があるんですけれども、これは何に使うカードなんですか?

高橋)これは、いわゆる「道カード」といわれるものをつくろうと思って取り組んでいるものなんです。トレーディングカードのようなもので、国道というと必ず「おにぎり型の、青い標識のマークがついていますよね。それが写っている道の風景を、ひとつのカードのかたちにして、道というものに対していろんな見方があるということ気づいていただくきっかけにしたいと取りくみはじめた「道カード・プロジェクト」によるものです。

住田)この通行止めになっているのは、国道418号と書いてありまして、国道マニアの間では「3大酷道」のひとつであるものですよね。「酷道」は残酷の「酷」の道と。

高橋)そうです。いわゆる過酷な道っていうんですかね。国道というと整備されて車が快適に走りやすい道だという印象が非常に強いわけですけれども、それは実はごくごくかぎられた幹線道路のことなんです。国道というのは、地域と地域を結ぶための、非常に大事な道ですので、山の中でもどこでもいろんなところで、道が張り巡らされているわけです。

住田)こういった道をみんなで語りあうことでなにが生まれてくるんですか?

高橋)基本的には、普段「道」のことなんて全く意識しないですよね。ただ道というのは、災害が起きたり、劣化してきたり、いろんな問題を伴ってくるわけですが、あらためてその道の意義や、道のおもしろさを感じていただくきっかけになればいいなと思っているんです。

住田)そういう意味でのこのカードとコメントなんですねえ。カフェもやっていらっしゃるんですって?

どぼくカフェ

高橋)はい、どぼくカフェという取り組みを3〜4年前くらいからやっています。それも、もともとのきっかけは、われわれのように、土木を専門にしている研究者や実務者の方と話していると、どうも元気がないんですよ。      
 特に中にいる人が、もうひとつ元気がなくて、それがなぜなんだろうと、いろんな話をしていくと、どうも自分たちの仕事に社会がまったく興味をもっていないというふうに感じているようなんです。興味をもっていないだけならいいんですけれども、基本的にはじゃまもの扱いされているというイメージがやっぱり強いんですよ。やっている人はそれなりに楽しくやっているんですけれども、どうも土木の中にいる人と、土木の結果を享受している一般社会の方とのあいだのコミュニケーションが全くないんです。
 だから、まずは土木の中の人がいかに楽しく仕事をしているのかということを見せようと「どぼくカフェ」というものを始めたんです。

住田)どんな場で、どんな人が集まるんですか?

高橋)一般にそういうイベントというと、あるビルの会議室をかりて、そこで開くっていうパターンが多いと思うんですけれども、それだと一般の方、興味のない方ってまず入ってこないですよね?

住田)扉の中に入るのがねえ。ええ確かに。

高橋)だからまずは、われわれが社会の中に飛び込んでいって、否が応でも目にふれるようなところで、土木的な話をしようと。それで第一回目は大阪の商店街の中で「どぼくカフェ」を開催しました。まずは内輪の人しか集まっていないんですけれども、やっぱり道いく人が、「あれっ?」て、非常に違和感を感じられるんです。
住田)ちょっと立ちどまったりですか?

高橋)ええ、見ていただくことが実は目的だったんです。まずは気づいてもらうことが、スタートラインかなというふうに思いまして。まずはそういう形で、一般の人通りの多い町中で「どぼくカフェ」っていうのを開催しようと思っています。

住田)面白いですね。この土木と防災っていうのはどうつながるんですか?

高橋)研究の対象にしているような、たとえば、道路であるとか、橋であるとか、そういうものは、当然ながら、日常生活のために必要な土木施設にあたるわけです。

住田)より便利にとか、早くいけるとか。

高橋)ただそれが地震のあとに断ち切られてしまうと、災害の後の復旧・復興に大きな影響を与えてしまうということもありますので、われわれの生活の基盤としての道路も、やはり重要なライフラインのひとつとして位置づけて、それが防災についても威力を発揮できるというようにしなければならないと考えています。



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