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京都大学防災研究所 Presents

第7回 煖エ 良和さん(京都大学 防災研究所 准教授 ※2014年2月1日より 京都大学大学院 工学研究科 准教授)

「耐震工学に、誇りと志を」(2ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

同じ柱も揺れにはばらつきがある

住田)ご専門は土木の中でも耐震工学、とりわけ橋梁、橋ですね。そして、橋の中でも橋脚だと伺ってきたんですが、この橋脚の中でも、今、研究されているのはどういう部分ですか?

高橋)はい、そもそも同じようにつくった構造物が、同じ揺れで、どれだけ揺れにばらつきがあるかということから調べていかないといけないかなと思い、兵庫県三木市に「Eディフェンス」という世界最大の振動台がありますけれども、それを借りて、振動台の上に16体の全く同じようにつくったコンクリートの柱を並べて、それを一斉に揺らすという実験をやったんです。

住田)同じものをつくって、一斉に揺らしたら、同じ結果じゃないんですか?

高橋)そう期待するわけですけれども、結果は全く同じではなくて、揺れて倒れた方向もわずかながらばらつきますし、地震が止まったあと、最後にどれだけ傾いているか、その大きさが、やっぱりそれぞれ16体、ずいぶん大きく違うわけです。

住田)どういうふうにひびが入りはじめたのかとか、どこが割けたからこういうふうにゆがんだのかということが、16体それぞれ実は微妙に違うと。

高橋)やっぱり違うんですよね。例えばひびわれがひとつだけずばっと入って、損傷していったものもあれば、たくさんのひびわれが入ったものもある。
 そういったことは非常に細かい部分をみているわけですけれども、それでは柱自体がどの程度ゆれたかというと、実はそれほど大きく変わらなかったりするんです。ミクロな視点でばらついていても、マクロの視点っていうんですかね、構造物の揺れ自体がそれほど大きくかわらない。だから、ある程度、現状の耐震設計の方向性はそれほど悪くはないという追認ができたと感じています。

住田)土木というと、ものをつくるというふうに思っていましたけれども、壊れるとしたらどう壊れるのかということも、みなさん真剣に見つめていらっしゃるということがわかりました。土木、耐震工学にかける高橋さんの熱い思い、実はその原点になったのが、平成7年に起きた阪神・淡路大震災だったということだそうですね。
 高橋さんが、耐震工学の道に進まれたきっかけを教えていただけますか?

南極観測隊だった校長先生との出会い

高橋)わたしが小学校のときのことです。校長先生が、朝礼などでいろんな話をされますよね。そこでけっこうおもしろい話をされる校長先生がおられまして、たびたび南極っていうキーワードが出てくるんです。
 当時のこどもたちからすると、南極っていうと、いまのこどもたちの宇宙みたいなもので、非常に遠い世界のことが一気に校長先生の話で身近に感じられたんです。よくよく調べてみると、校長先生がかつて南極越冬隊員だったと。小学校の図書室にいくと、南極越冬隊の本があって、それを見ると校長先生の名前が載っていると。もうそれだけで小学生としてはわくわくしてきますよね。
 やっぱりそこが、ぼくにとっての科学に対する芽生えというか、科学に対する興味の芽生えがありました。
 それも、日常の生活をしていると、そんな話もどんどん忘れてしまうですけれども、高校のときにお互いの親がなにしているかという話をしたら、サッカー部の友達が「うちの親、いま南極にいるよ」と。「え、南極!」って、急に小学校のときのことを思い出したんです。なんでその南極にいるのって話を聞くと、地震観測に行っていると。
地震観測で、南極越冬隊員の一員として、行っているんだと。それで、「ああ地震の研究をすると南極にいけるんだなあ」という漠然としたおもいが芽生えたんです。

住田)ちょっと勘違いもありますけども(笑)

高橋)かなり勘違いは大きいんですけれども、実はその友達のお父さんは、京都大学の防災研究所の先生だったんです。その方は理学部出身で地震の研究をされていて、それで南極に越冬隊員として調査にいかれたと。だから理学部にいくと地震の研究をして、南極にいけるんだと思い、地震の研究をやりたいなと思ったわけです。

住田)それで理学部に?

高橋)実は理学部に進もうと思ったんですけれども、わたしあまり国語が得意ではなくて、大学の入試の中で理学部は試験に国語があると。
 けれど、工学部は試験に国語がないので、どうせなら国語がない工学部に進んで、そこで地震に関係するような研究ができるようなところがないかなと思って、土木か、建築か、そのふたつのどちらかにいこうと思ったんです。
 わたしは幸運にも耐震工学研究室という、自分の志望する研究室にもはいることができて、コンクリートの橋をテーマに、それが地震でどういうふうに挙動するか数値解析する研究に取り組みました。



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