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京都大学防災研究所 Presents

第8回 福島 洋さん(京都大学 防災研究所 助教 ※2014年2月より、東北大学研究推進本部URAセンター特任講師)

「地球まるごと、中から外から」(1ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

合成開口レーダー “SAR”

住田)地球物理がご専門の福島さんの研究室におじゃましています。よろしくお願いします。

福島)よろしくお願いします。

住田)福島さんがいま、もっとも力を入れているのが、人工衛星によって得られた画像の解析ということなんですね。で、その研究の手法が「SAR」と書いて「サー」の解析ということなんですが、この「サー」っていうはなんなんでしょうか?

福島)SARというのは、日本語でいうと合成開口レーダーといいます。

住田)合成というのは、合わさる、開口は口が開く、レーダーですね。

福島)はい、そうですね。そもそもレーダーとは、自分でマイクロ波を出して…。

住田)細かい波をあてるんですね。

福島)ええ。それで撥ね返ってくる情報を使って、距離や速度などを知ることができるのがレーダーなわけですね。なぜ合成開口というかというと、通常、レーダーは大きければ大きいほうが、解像度があがるんですけれども、小さいアンテナを使って高解像度のものを実現する技術があるんです。
 コンピュータの中であたかも大きなレーダーがあったかのように処理をするというテクニックがあって、それに「合成開口」という名前がつけられているんですね。

東日本大震災による地殻変動

住田)パソコンにその画面が出ているんですが、これは東北、つまり東日本大震災の影響をとらえた映像、画像ですか?

福島)はい、そうですね。東北で地震が起こったときに、地震の前にとられたレーダーの画像と、後にとられたレーダーの画像の両者を比較することによって、地震のときに起きた変動を検出した画像です。

住田)ちょうど仙台平野から岩手県南部の沿岸部が非常に濃い海老茶色に着色されていて、だんだん遠ざかるにつれ、赤、オレンジ、黄色と、薄くなっています。色が濃い部分は、なにが起きたと読みとれるんですか?

福島)これは衛星から、地震のときに生じた地殻変動をとらえているものです。色の濃いところが変動量の大きかったところです。この地震によって、牡鹿半島あたりを中心としたところは、東にも動いたし、沈降もしたので、変動量がかなり大きかったというふうに出ています。

住田)どれくらい、動いたと結果が出たんですか?

福島)衛星からの方向で、5.3mくらいだったと思います。

住田)人工衛星は、ずっと止まっているものではなくて、ちょうどリンゴの皮を斜めに剥いていくように、ぐるぐるずれながらまわっていきますよね。そう考えると、どのように人工衛星からそのような計算が可能なのですか?

福島)そうですね、地球観測衛星で飛ばしている衛星は、だいたい700キロくらいの空を飛んでるんですけれども、基本的には、同じ場所に定期的に帰ってくるようになっています。でも、全く同じ位置に帰ってくることはできなくて、数百メートルとかずれるわけですね。そのずれた位置からみると、画像のとる範囲もビミョウにずれますし、補正もしなければなりません。
 二枚の画像を使って解析するときには、まず正確な位置合わせをしなければならないんです。そのためには、画像のいろいろな部分の濃淡がなるべく合うように、コンピュータで探し出したりして補正するんですね。あとは、距離の変化をみるので、衛星の位置がずれていることによる、見かけ上の変化っていうのを補正しなければならない、それも重要な補正になっています。

住田)なるほど。そういった微妙な調整をしながら、この東北なら東北の、広い範囲のデータを立ち上げていくわけですか。

福島)はい、そうです。



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