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京都大学防災研究所 Presents

第8回 福島 洋さん(京都大学 防災研究所 助教 ※2014年2月より、東北大学研究推進本部URAセンター特任講師)

「地球まるごと、中から外から」(4ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

東日本大震災で感じたこと

住田)そのあと、2006年には日本に帰ってこられて、京都大学防災研に入られるわけですけれども、すぐにまた2008年から2010年まではアメリカのスタンフォード大学で研究されます。世界を渡り歩く、グローバルな展開をなさっているんですが、2011年の3月11日、東日本大震災の日は、どこにいたんですか?

福島)そのときはここの研究室にいました。

住田)どういうふうにその状況をキャッチなさったんですか?

福島)そうですね、パソコンに向かって仕事をしていたんですけれども、ゆらーりゆらーりと、あのゆっくりな揺れがありまして、まあすごい気持ち悪い感じですね。それが地震ということはわかりましたけれども、それが長く続いて、こんなに長く続くというのはなんかちょっとおかしいぞと思って、それでテレビのある部屋に走っていってですね、テレビをつけた。
 そしたら、東北で大きな地震があったと、ニュースが伝えているのを目にしました。

住田)いつも研究されている人工衛星のデータが次々に入りはじめたのは、ちょっと経ってからだったんですね?

福島)そうですね。衛星も、JAXAの衛星の場合は、同じところに帰ってくるのが46日おきなんですね。それでわたしの専門の地殻変動を検出する技術っていうのは、同じところでとったものしか使えないので、最終的に全体が分かったのは、4月に入ってからのことでした。

住田)なるほど。地震の波をずっと見つめてこられた福島さんですが、そのときに研究者としてどういうことを思われましたか?

福島)そうですね、まずは非常に多くの方が亡くなったということで、非常に悔しかったです。もしこういうことが起こるって分かっていれば、だいぶ防げたことはあるので。後から考えても仕方がないと頭ではわかっていながら、あまりそういうふうに考える気にはならなかったですし、もう、ただただ、なんでこんなになっちゃったんだろうっていうような感じで、悔しく思っていました。

住田)地震はわたしたちが住んでいる地球でおきるわけで、そこに住んでいる人の命にも関わってくる、そう実感された部分はありますか?

福島)そうですね、普段、研究しているときは、人っていうのは全く入ってこないわけですけれども。

住田)つまり、数値とかデータとか画像とかですね。

福島)わたしたちのやっているメインのミッションは、地震の発生の予測なので、普段の地震のメカニズムを調べるための研究も、そこを目指してやっているわけですよね。
 メカニズムをよく理解して将来に起こることを予測するということをしているので、それが役に立たなかったというか、まったく予測されてなかったことが起こってしまったということに、非常に考えさせられるものがありました。

住田)なにか、3.11前と、3.11後で、先生の研究に、なにか新たに加わった要素はありますか?

福島)そうですね、防災にとっても、地震のメカニズムの研究や、火山の研究は、ひとつの重要な要素だと思うんです。その基礎研究をやっていると。その関係って非常にあいまいなんですよね。防災にどういうふうに役に立つのか、具体的に直接役に立つということをしているわけじゃないので、わたしだけじゃなくて、多くの理学の研究者は、非常に悩んだところがありました。
 まだ、なかなか、クリアなものは見えてきていないんですけれども、そうした点を考えていきたいと思っています。

研究の夢

住田)社会とのつながり、人の命とのつながりということですか。ヨーロッパに渡られて、あるいはアメリカの大学でずっと研究してこられて、そして日本でも研究をずっと続けてこられて、地球を上からみたり、その中を探ったりされてこられたんですけれども、福島さんのこれからの夢はどういうものですか?

福島)そうですね、わたしは性格的にあまり夢っていうのを考えたことがなくて、たとえば、仕事の上でこれを実現したいとか、こういう目標に向かって進んでいくということはあまりしないんですね。目標をつくってそこに向かっていくっていうと、なんかもう道筋が見えている感じですよね。そうじゃなくて、自分で研究者をやっている原動力っていうのはやっぱり冒険ですよね。
 アマゾンの冒険と同じことで、この先になにがあるんだろうとか、どうなっているんだろうとか、これはなんでこうなっているんだろうとか。そういうことを、知的な冒険として探っていくことが面白くて研究者をやっているので、その先が見えないところがおもしろいんですよ。

住田)わからない扉があったらそこを開いて前にすすむと。

福島)そうですね、あえてそういう興味にまかせて、好奇心第一でやっています。

住田)そうですか。5年後、10年後の福島さんは、なにを研究されているんでしょう?

福島)それは自分でも楽しみですね。

住田)そうですか(笑)

福島)いま、人工衛星のデータつかってやっていることで、こういうことができるといいよなっていうことはありまして、それは先ほどもちょっと言いましたけれども、たとえば、将来的な地震の規模の予測などに使えると思っているんです。
 わたしも自分がやっていることで人の役立てればいいなと思ってやっているので、そういうところで貢献できるといいなと、役立てるようにがんばろうと思っています。

住田)はい。ぜひこう広い目で、そしてグローバルに、これからも地球を見続けていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

福島)はい、ありがとうございました。



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