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京都大学防災研究所 Presents

第8回 福島 洋さん(京都大学 防災研究所 助教 ※2014年2月より、東北大学研究推進本部URAセンター特任講師)

「地球まるごと、中から外から」(3ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

核実験監視モニタリングの仕事

住田)修士課程を終えて就職されるんですが、なんと国連機関にすすまれます。CTBTO、これはどういうことをしているところなんですか?

福島)CTBTという条約がありますよね。包括的核実験禁止条約のことで、これはまだ条約としては発効していないわけですけれども、条約として発効したときには核実験監視のモニタリングシステムがなければならないということになっていて、そのために、CTBTOですね、Oというのはオーガニゼーションなので、機関ということですけれども、モニタリングをする機関をつくっていて、実際に現在も運用されています。

住田)それは、どこで、どうやって観測しているんですか?

福島)CTBTOは、オーストリアのウィーンにあります。IAEA、つまり国際原子力機関と同じ建物に入っていて、世界中のデータがそこに集められてきて、自動解析され、それをさらにそこで働いている人たちが再チェックする、そういうシステムで動いています。

住田)どんな人たちが観測しているんです?

福島)いろんな国の人がいて、たとえばケニア、ブラジル、エチオピア、インドネシア、中国、とにかく世界中のあらゆる国からの人たちがいました。本当は自然地震かどうかわからないんですけれども、なにかしらの、われわれはイベントと呼びますけれども、なんらかのイベントがあったときにそれの震源決定をするんです。それが大部分は自然地震で、たまに発破ですね、
 たとえば鉱山なんかでの発破もとらえられますし、もしかしたら核実験がまぎれているかもしれないと。そこで、何時何分にどこでどれくらいの規模の地震があったかというカタログをつくって、条約の加盟国に配布するんです。そのカタログづくりがわたしたちの仕事でした。

住田)社会の出来事を波でキャッチする、こういう仕事があるんですね。

福島)そうですね。

フランスでの火山研究

住田)2000年から2002年まではCTBTOでお仕事をされ、そのあとフランスに渡って、フランスの大学で今度は火山の研究をされています。

福島)はい。フランスの、クレルモンフェランという町に、パスカル大学という大学があります。わたしそこの博士課程に所属して、インド洋の火山の研究をしました。インド洋にレユニオン島という島があって、これは火山の島なんですね。火山活動でできた島です。
 マダガスカルの沖700キロくらいのところにあります。そこにフルネーズという名前の火山があって、そこは非常に活発な活動をしています。平均すると1年に1回以上の頻度で噴火しているんです。その火山の研究をしていました。

住田)基本的には、やはり波をキャッチするということなんですか、それとも衛星を使うんですか? 

福島)そうですね、そのときにSARとの出会いがありました。初めてSARのデータを使って地殻変動を調べるということをやって、マグマが噴火のときにどういうふうにあがってきたとか、そういうことを調べるということを研究テーマにしてやっていました。

住田)SARというのは、最初にお伺いした、人工衛星からレーダーをあてて、地表の変化などをみていくものですね。でも、マグマというのは地面の中ですよねえ?どうして、地面の中のマグマが、上からみてわかるんですか?

福島)そうですね。火山の種類にも、いろいろありますけれども、フルネーズ火山というのは、ハワイのキラウエア火山と同じで、さらさらの溶岩を出すんですね。噴火の前にはマグマが当然上がってくるわけですけれども、上がってくる際に、岩を割りながら上がってくるんです。割りながら上がってくるということは、結局、岩が両脇に押し広げられるということになります。
 また、噴火が続いている時は、マグマが下からどんどんあがってくるのですが、それが終わるときは、マグマがそのままそこで冷え固まるんですね。そうすると、両脇に押し広げられた分はそのまま残りますから、噴火の前と後で撮った画像を使って解析すれば、その変形がわかるということです。

住田)実際に、レユニオン島にも行かれたんですか?

福島)はい。わたしは衛星のデータを使って研究をしていたので、行かなくても研究はできるんですけれども、当時わたしを指導してくれていた先生が、実際に研究対象としている火山をみることは大事だろうと、他の学生の観測チームに私を入れてくれて、3週間レユニオン島に滞在して、観測の手伝いをするということをしました。

住田)実際に、目の前に生きている火山がある。ご覧になったとき何か感じられたことはありますか?

福島)そうですね。普段研究しているときは、火山がコンピュータの画面におさまってしまっているので、スケール感って全然ないんですけれども、実際に行ってみると大きいなあと思いました。それに、非常に活発な火山だったんで、溶岩で覆われているわけですよ。
 噴出物で覆われていて、植物もあまりなかったりするので、ちょっと異様な感じですね。そこにこう火山がそびえたっているというのを見て、ある種の畏敬の念を抱きましたね。人間が制御できないということは厳然としてあると。
 もう人間の力がかなうようなものではないというようなことを実感して感じると。厳粛な気持ちになりました。



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