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京都大学防災研究所 Presents

第8回 福島 洋さん(京都大学 防災研究所 助教 ※2014年2月より、東北大学研究推進本部URAセンター特任講師)

「地球まるごと、中から外から」(2ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

地表から地中へ

住田)もうひとつ地震ということに限っていいますと、表面だけではなくて、地中の地質がどのように変わって動いているのかということも大切な要素ですが、これは、これからは見えてこないんですか?

福島)衛星から見えるのは地表面の変形ですけれども、わたしたちは地下でどのようなことが起こっているかというのを知りたいわけですね。だから、地表面の変形を説明するには、地面の下でどのようなことが起こっていなければならないかということも解析します。

住田)それも可能なんですね。

福島)はい。今までは実際に機器を地面に設置して測量したりしてデータを得ていたわけですけれども、衛星を使うと面的にきれいにデータが得られるので、地下の情報も、当然、より多く含まれていることになります。

住田)こうしてみてみますと、空の上から非常に広いマクロな視点で見ているのですが、実は大地の中のゆがみもわかってくるし、非常に局地的なミクロな変化もわかってくるんですね。そう考えますと、福島さんの研究は、地震の予知にも、かなり役立ってくるんじゃないかなって期待するんですけれども、どうですか?

福島)そうですね、そこまで出来ればいいのですが、なかなか地震も、調べれば調べるほど、いろいろ複雑なことがあるということもわかってきています。別々の断層が、同時に動いているというようなこともあることが分かってきました。
 地表面の変形のデータから地下でどのようにすべったかということを推定するわけですけれども、それでもいろんな多様性があることがわかってきているので、いまはそういう基本的なメカニズムを知ることが先で、なかなか将来の予測というのは一筋縄ではいかないなと思っています。

住田)しかしはるか先には、なにか手掛かりになりそうなことはありますか?

福島)そうですね。とりあえず現段階で、SARを使ってできるかなと思っているのは、活断層のまわりの細かな変形を調べると、そこにどういうふうに地下に力がかかっていっているかということがわかるので、それがわかれば、時期的な予測はかなり難しいと思うんですけれども、将来の地震の規模みたいなものは、わりかし押さえられるかなという気はしています。

地球物理を志したきっかけ

住田)なるほど。ここからは、福島さんがなぜ地球物理の道に進もうと考えるようになったのか、そのいきさつや、将来の夢、展望などをうかがっていきたいと思います。
福島さんが地球物理を志すようになったきっかけはなんだったんでしょうか?

福島)そうですね。高校時代に進路を考えなければならないですよね。その時に、なにをやりたいかということを自分なりに考えたわけですけれども…。

住田)生まれは仙台で、お育ちになったのは静岡県ということですから、もしかすると静岡で、東海地震などの話に触発されて、研究しようと思われたんですか?

福島)そういうことはあまり考えてなかったですね。高校生の当時は、普通の高校生というか、一般の人っていう感じで、特に東海地震などの話題からやりたいと思ったわけではないです。ただ、いろいろ自分でモノの仕組みなどを考えることは好きだったので、物理学はそういう学問だと思い、物理をやりたいと思ったんですね。
 それで、物理っていってもいろいろありますけれども、当時オゾンホールがかなり話題になっていて、そういうテーマがおもしろいかなあと漫然と考えて、地球物理の方面に進もうと思いました。

住田)中学高校のころは、バスケットボール部で、バスケのサイエンス的な見方をしていたというような話も伺っていますが。

福島)たとえばアメリカのNBAの放送を当時やっていましたけど、それも一生懸命見て、どういう筋肉の使い方をしているかとか、そういうことを見て、いろいろまねしたりしてですね、自分なりに試行錯誤したり、そういうことは好きでしたね。

住田)大学時代にはオーケストラをやってらっしゃった?

福島)はい。それもバイオリンを弾いていたんですけれども、バイオリンっていうのも、なかなか体の使い方という意味では、難しいところがあって、自分なりに考えて楽しみながらやっていました。

住田)その後、東北大学に進まれるんですけれども、地震というものと正面から向き合うのはこの大学からということになるんですか?

福島)そうですね、物理系に行って、地球物理の分野に進んで、データの解析の演習があったんですね。そのときにたまたま地震波の解析をしたというのがはじまりです。研究室に配属になるとき、地震のデータの解析に親近感があったっていうこともありますし、あと私が進学しようと思った研究室では、地震波の散乱の研究をしていたんですよ。

住田)散乱?

福島)散乱ですね。地震波には、P波とS波がありますよね。理論的には、地震波の散乱がないと、P波がぴょこんときて、S波がぴょこんときて、あとはもう静かで何もないという波形なわけですけれども、実際には、地震波の波形は尾を引いているわけですね。それは散乱、すなわち、ほかのところに行った地震波がなにかにあたって遅れて届く。その重なりが実際にはみえているわけです。
 それを理論的に説明しようとするときに、いろんな難しい数式とかが出てくるんです。わたしは数学はまったく得意ではないんですけれども、なにかそこに、なんていうか、わからないものに対するあこがれみたいなのがあって、これはなんでこうなっているのか、この理論はなんなんだろうかと、そういうことを知りたいなと思って地震学の講座に進んだんだと思います。



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