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京都大学防災研究所 Presents

第9回 竹門 康弘さん(京都大学防災研究所准教授)

「環境防災学」(4ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

研究の夢

住田)その考え方が環境防災学の基本ということですね。最後に、改めて竹門さんの描く環境防災学とは何なのか、それが今後の社会、若い人たちにどう広がっていくことを望んでいらっしゃるのかというのを教えていただけますか。

竹門)環境防災学の最終形というのは、自然の恵みがちゃんと活用、活かされている、そういう川なり海岸なり山なりが最終形ですよね。したがって、単に災害を防いでいるだけじゃなくて、災害をもたらす自然の恵みをちゃんと理解し、それがうまく社会の中の仕組みとして利用されているというのが目指すべき姿だと思いますね。

住田)そういう意味では、竹門さんは京都の川の恵みを活かす会などの活動もなさってらっしゃるんですよね。

竹門)そうですね。

住田)子供たちと上流のほうで石積みをしてみたり、あるいは魚を一緒に見てみたり、川がどんな仕組みなのか、皆さんと見学しておられる写真も今手元にあるんですが。

竹門)はい。そうですね。小学校に行って、「川で遊んだことある人」って手を挙げてもらったりしてですね、「じゃあ実際に川に行って遊んでみましょう」というようなことを活動の一環としてやってますね。

住田)ただ一方で、鴨川というのは昔から水があふれて、京の町を襲ったこともある。つまり、そういう存在でもあるっていうことですよね。

竹門)もちろんそのとおりです。現在の鴨川というのは、堰堤がたくさんあって、堰堤と堰堤の間は平らになっています。この形状は、必ずしも自然の要請からすれば好ましい姿ではないんです。どうしてそうなってしまったかというと、1935年に鴨川大出水があって、大きな被害が起こりました。それを防ぐために、川の断面積を増やすために、掘り込みまして、エネルギーを落とすために堰堤をつくって、その下流側を石畳にしたと。

住田)自然の力と恵み、両方をやっぱり私たちは学んでいかなきゃいけないと。

竹門)ええ。だから防ぐ一方じゃなくて、自然の持っている恵みの部分というものにも、両方にスポットライトを当てることです。相反するものじゃなくて、こちらにとってみればこの部分が必要だから、同じ防ぐにしても、ここの部分は恵みのために残しておこうという、そういう発想ですね。お互いの両立が図られるような仕組みづくりというのが理想であるということです。

住田)それを若い世代にどんどん伝えていこうと。

竹門)そうです。それを「こうですよ」って言って、出来合いのものをお渡しするんじゃなくて、その恵みの部分というのが価値観としてちゃんと育っていくように、自分たちでそれをなくしては困ると思えるようにすることが大事だと思います。

住田)今日はどうもお話ありがとうございました。



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