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京都大学防災研究所 Presents

第15回 飛田 哲男さん(京都大学防災研究所准教授)

「研究も人生も、地盤が大事!」(3ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

そしてアメリカへ

住田:修士課程まで、京都大学で学ばれた後、今度は一転してアメリカに向かわれます。南カリフォルニア大学で5年間、ここで学位も取られるわけですけれども、いろいろ勉強の進め方、研究の進め方で、それまでと違った考えた方があったんだそうですね。

飛田:はい、留学したのが、97年の9月からなんですけども、その時の指導教授が、ジャン・ピエール・バーデー先生っていうんですが、学期が始まる1週間くらい前に会いまして、「哲男、お前は、私の授業のティーチングアシスタントをやれ」って言われたんですね。

住田;ティーチングアシスタント?

飛田:はい、ティーチングアシスタントというのは、補講クラスみたいなもので、指導教授のバーデー先生が通常の授業をやって、週に2回私が補講をやると。その内容というのは、演習問題を解いたりするものなんです。もちろん英語なんですけれども、それをいきなりやれと言われて、ちょっと困ったなと・・・。

住田:勉強に来たのに、人をまず教えなさいと?

飛田:はい、今までそんな事したこともないのに、しなさいと言われて、まず最初の半年から一年くらいは、その準備に時間を費やしていました。     

住田:学生の反応はどうだったんですか?

飛田:日本と一番違うのは、成績重視ですね。成績重視っていうのは、学生が就職する先の企業のほうが、大学の授業の成績を重視しているんですね。なので、学生のほうは、少しでもいい成績を取ろうと思って、必死に勉強して、成績が少しでも悪いと、テストの点が悪いとなんでだという風に聞いてくるんですね。

住田:それを説明しなきゃいけない。

飛田:説明して納得していただかなければいけない。

住田:はぁ、なかなかその考え方や姿勢から発言、それから答えるというやり取り、相当タフなわけですね、皆さんね。そこで、日本と欧米の違い、流儀の違いっていうものに触れたんだそうですね。

飛田:学問というか、研究に関しては、日本の地震工学についていうと、かなり進んでいる。世界でも、トップレベルにあると思います。ですが、欧米の方は、技術は少し遅れていても、先に設計の基準とか、コードをばーっと作ってしまう。
設計の世界標準を作ってしまうんです。そこで、これから日本がやろうとしているような途上国に出て行って、日本の建設業がそこで活躍しようっていうときに、日本の基準で設計したんでは受け入れてもらえないっていう事情があるんですね。そのあたりが、日本の建設業の問題点かなっていうふうには考えています。

東日本大震災の被災地で

住田:飛田さんが、今度は京都大学に戻ってこられるのが、2002年です。そのあと、海外は、スマトラですとか、トルコとかチリですとか、もちろん日本国内、中越、中越沖、能登などいろんな被災地を調査されるわけですけれども、その後に、今度は2011年。東日本大震災。目の当たりにされるんですね。

飛田:そうですね、2002年に防災研究所に助手として着任して以来、いろいろ調査をしてきたんですが、その中で2004年にスマトラの地震がありました。その時も巨大津波がありましたね。
そのあと、インドネシアのバンダアチェという、スマトラ島の最北端の街に、調査で行かせてもらったんですけれども、津波の被害というのは、こういうものかと。
というのは、一面真っ平になっているんですね。それを見て、非常に衝撃を受けた覚えがあります。ただ、その時は、これはインドネシア・スマトラで起きた、ある意味で日本人として行った私にとっては、他人事のように思えたんです。ところが、2011年の3月11日に東日本大震災が起きて、そのあと4月に現地調査に行かせていただいたんですが・・・。

住田:どちらに行かれました?

飛田:まず、気仙沼。そこから、海岸線をずっと下って、石巻まで見ました。

住田:どうでしたか?

飛田:まさか、バンダアチェのようなことが、日本で起きるとは思っていなかったと。それが起きてしまったという衝撃ですね。

住田:それまで研究を重ねてこられたわけですね、調査も重ねてこられた、そして地盤工学が大切だと思ってらっしゃった、その気持ちでその光景を見て、どう変わりましたか?

飛田:やっぱり、自然は常に人間の想像をはるかに超えて、はるかに超えたスケールで、はるかに超えた現象をもたらすっていうところを、深く考えさせられました。
なので、人間が、自然をうまく変えて、自然の力を完全に防ぐっていうよりは、自然のことをもっとよく知って、それに対応したような対策を考える方が大事なんじゃないかなというふうに考えます。

住田:なるほど。そういう意味では、ひとつひとつの悲しい現場ではありますけども、そこを見つめるってことは大切ですね。んー。いまは、どういう研究に取り組んでらっしゃるのか、一番新しい取り組みはどんなところですか?

飛田:地盤の液状化というのが、かなり前から問題になっていますが、例えば、東日本大震災では、千葉県の浦安などで大きな被害がでていますよね。
そういうところでは、家が傾くのも大きな被害ですけど、水道管とか下水管が、大きな被害を受けるんですね。その被害の形態を見てみると、管がぬけたり、あとは浮いてきたりっていう被害があるんですね。
それを防ぐ方法としては、いろいろ考えられているですけども、我々が、いまやろうとしているのは、液状化した時にその管に作用する力を正しく評価してやって、たとえ液状化したとしても、管が抜けないような構造をつくるとか、そういう外力の評価っていいますけども、そういう研究をしています。

住田:なるほど、つまり、地盤の中に埋まっているもの、それが地盤がゆれたり変動したりすることによって変形する、その時にどんな力を受けるかっていうことを研究するということですね。こうして伺ってきますと、飛田さんの関心というのは、私たちがもろもろいろんなものを作るその人工物ではなく、その地盤のほうにやっぱり関心があるということですか?

飛田:そうですね。はい。それは、やっぱり、あの子供のころ、「宇宙ってどうなってるんだろう」っていうところから・・・

住田:宇宙の果てはどうなっているんだろうと?

飛田:はい。サイエンスというか、そっち方面に興味がある。人間が作ったものというよりは、むしろ、自然がどういう性質を持っているだとか、地震が来た時に、地盤がどう揺れるのかとか、そういうことに興味を持って、いままで研究をしています。



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