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京都大学防災研究所 Presents

第16回 ;中道 治久さん(京都大学防災研究所准教授)

「火山の“ホームドクター”」(2ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

火山学に至るまで

住田:火山学がご専門の、中道治久さんに、今日は、鹿児島県の桜島にある京都大学の観測所でお話を伺っています。中道さんが、そもそも火山に興味を持たれたその原点を伺っていきたいと思うんですけれども、ご出身は富山県ですよね?

中道:はい、そうです。

住田:富山県も、立山連峰には、火山っていうのがあるわけですよね。やはり幼いころから火山には関心があったっていうことですか?

中道:実はそうじゃないんです。

住田:そうじゃなくて?

中道:私は、富山県の今でいう南砺市の生まれなんですけども、確かに火山は立山にあるんですが、いきなり小さいころから、興味を持ったわけじゃないんですよ。
ただし、私の父がよく登山をしてたんで、連れられて、山に親しみはありました。自然に地球や地形とか、そういったことに、興味を持ち始めたと思いますね。

住田:なるほどね。どうして、このように山がそびえ立っているのか、この谷は削れてできたのか、とか地形を見ますよね。

中道:ええ、そうです。

住田:そして、中道さんは、東北大学理学部の地球物理学科に進まれます。ここではもう火山一直線という感じだったんですか?

中道:実はちがうんですよ。

住田:そうでもない?

中道:まだちがうんですよ。地球物理を選んだのは、結構漠然とした理由で、割と身近なところにある気象とか海とか山とか、そういった現象の物理をしたいということがあったと思うんです。ですが、噴火の映像を見て、やはり迫力があるんですね、真っ赤なものが上がるっていうのは。
それで惹かれて、火山を選んだのも一つですね。後は、火山っていうのはマグマ、液体ですね、流れるんですね。そして、石や岩石の個体、あと気体もあるんですね。火山灰が飛んだり、そういった現象がいろいろ複雑に組み合わさっている学問でして、そういったところにも、物理学として興味があったってことですね。
後は、実は今もそうなんですけども、火山を選ぶ志望者って一番少ないんです。人とちょっと違うことしてみたいなっていう、そういうところがあったと思いますね。

住田:普通学生さんは、就職に有利かとか、研究者をめざすならその分野にたくさん人材を求められているかとか、そういうことを考えるんですが、火山の志望者は少ないんですか?

中道:そうですね、今も少ないですね。残念ながら。

住田:じゃあ、今若い人で、何をしようかなと思う人は、火山研究者にもっと欲しいと?

中道:ええ、そうです。おすすめですね。

住田:中道さん自身も人が少ない道をまず切り開こうという、言ってみればチャレンジングな…

中道:そうですね、そういうのがあったと思いますね、今もあります。

住田:大学院時代の研究テーマが、岩手県盛岡のそばに美しい山肌が見えますけれども、岩手山、だったということです。ちょうど、噴火騒動があった時期だったと?

中道:そうですね、私が大学院生のころ、1998年に岩手山の直下で地震がいっぱい起こったり、山が膨らみ始めたんで、それで噴火するんじゃないかと騒がれた時がありまして、その岩手山を私は博士論文のテーマにしました。

住田:まさに動き始めた、なにか次起こるんじゃないかという山だったわけですね?

中道:そうですね、今となっては、ちょっと恐ろしいんですけど、山の近くまで調査に行ったりすることもありました。

住田:近くに行って、何をされたんですか。

中道:私は地震観測をしていました。

住田:揺れですか?

中道:揺れです。マグマが上がってくると、地面が割れるので、その揺れを観測する機械を山肌の近くに置いたりしました。

住田:それで、どうなったんですか?

中道:結局、噴火はしませんでした。未遂に終わりました。

住田:今、未遂という風におっしゃっいました。火山学では未遂と言うんですか?

中道:未遂と言ってますね。マグマが、比較的浅い、地表から数百メートルのところまで上がってきたっていうのがわかってましたんで。



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