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京都大学防災研究所 Presents

第18回 馬場 康之さん(京都大学防災研究所)

「海待ち風待ち、データよし!」(1ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

白浜海象観測所から

住田:今日は和歌山県の白浜に来ています。海を見下ろす高台にある京都大学防災研究所の白浜海象観測所という場所です。馬場さん、よろしくお願いいたします。

馬場:よろしくお願いします。

住田:まだ真新しい建物で、新しい建材の匂いもしているんですけれども、この高台に4月に移転が完了したばかりということです。移転にはいろいろ理由があったんですね。

馬場:そうですね、まずひとつは私どもの観測所は、もともとできたのが昭和43年だったんですけれども、かなり時間もたちまして、建物も老朽化していると。あとは建物自体の標高があまり高いところにはありませんでしたので。

住田:以前は、割と海辺に近いところにあったのですか?

馬場:そうですね、たとえば、津波なんかの時には、観測所の機能自体が止まってしまうとか、データが無くなってしまうとか、そういう恐れがありましたので、近くにちょっとした高台の場所が見つかりましたので、そちらへ移ってきたということですね。

住田:先ほど海辺の方も案内をしていただいたんですけれども、実際に観測をする拠点のポイントっていうのは、海の真ん中に実はあるんですね。観測塔というタワーですね。大きな塔が田辺湾のちょっと出たところにそびえたっているんですけれども、これは手元に写真があります。黄色いタワーですね。

馬場:そうですね。

住田:そこに螺旋階段がついています。高さは何メートルくらいですか?

馬場:だいたい23mくらい海面からありますね。

住田:円筒形のかなり太いポールの上に、いろいろな観測機器がのっています。ここからデータがこの建物の方に送られてくるんですね。いろいろアンテナが突き出てますけど、どんなものを観測しているのでしょうか。

馬場:そうですね、主に気象と海象ですね。海の現象に関わるものを観測するということです。たとえば、風向ですとか風速ですとか、日射ですとか、気温、湿度ですね。あと海の方でいいますと、水温ですとか、波高ですとか、潮位とか、そういうものを連続的に測っています。

住田:連続的に、決まったポイントでとる、これが大切なわけですね。

馬場:そうですね、決まったところで、24時間365日ずっと休まずにとるということですね。

住田:時には、カメラをつけての観測もあるんだそうですね。

馬場:あります、はい。

住田:これは、何を見るんですか?

馬場:海面側ですね。波が崩れている様子をとったり、その波が崩れて水の中に入ってくる様子をこの海中の方からとったりするということもあります。

住田:波が崩れるっていうのは、どういう現象をそこで見ようとか、それを見ることによって何がわかるんですか。

馬場:例えばいろんなガスですね。気体なんかがどう溶け込んでいくのかという過程ですとか、そういうものを調べるための基本的な条件を調べるということですね。

住田:では、相当広い眼で見るのと、泡が溶け込んでそこから空気中の二酸化炭素などが溶け込んでいくのを見るように相当細かいものを見るのと、いろんな眼でこれを見てるというタワーなんですね。
海の観測といいますと、私たちは験潮所、つまり、潮の満ち引きですね、あと波が高い低いといったようなことを思い浮かべますけれども、それだけではなくて、非常に環境とも密接に絡み合う変化を全部見ていこうと。

馬場:そうですね、基本的にとれるものは全部というスタンスでやっています。

住田:とれるものは何でもとっていくと。

馬場:そういうデータの蓄積があって、たとえば、災害があった時の状況を調べたりとか、あとはうちは今のところ、水温しかとっていませんけど、水質に関するような話も、そういう長期のデータの中から、とらえていくことができると。

測れば測るほど見えてくる

住田:海というのは、まだまだわかっていないことも多いんだそうですね。

馬場:そうですね、ほんとに測れば測るほどいろんなことが見えると言ってもいいと思います。
例えば、水温なんかを測ってても、やっぱり季節ごとの変化も大きいですし、同じ季節でも水深の深さ、方向によってもころころ変わりますし。あと、それとともに塩分ですね、塩分の濃度、塩の濃度も、変わったりします。例えば台風なんかが通過して、雨が降ったり、淡水が流れ込む、河川水ですね。
それらが流れ込んだりすると、海面の表面近くの水の塩分が薄くなって、水が甘くなると言ったりもしますけども、そんな状況のこともあります。

住田:水が甘くなる?

馬場:雨が降るとやっぱり塩が薄くなりますので。

住田:それで甘くなると。

馬場:勝手に言うてますが…

住田:表現を、なるほど。ずっとこれまで、データをとってきた観測所だそうですが、この観測所を設置された先生はどうして田辺湾を選んだんでしょうね。昭和35年から6年にかけて設置されたそうですが。

馬場:ひとつは防災の面で言いますと、やっぱり台風なんかがきますと、高波が起こったり、高潮がおこったりということで、こちらのエリアは台風もよく通る地域なので、そういう観測には適した場所であるというのがひとつですね。

住田:台風が南のほうからこの紀伊半島沿いに上がってくる通り道であると。

馬場:もうひとつは、紀伊半島の南に位置しているので、黒潮の影響なんかもあります。

住田:この観測所は、実は太平洋に面している湾なんですね。

馬場:かなり近いですね。ですので、そういう黒潮なんかの外洋の影響なんかもとらえて、観測ができるということですね。その2点が大きな理由だと聞いています。

住田:しかし、日々のデータをとるというのはかなり地道なものなんでしょうね。そういうメンテナンスも含めて。

馬場:基本的に、本当に、おっしゃっていただいたように地道な作業ですけれども、個人的には、測器を入れて観測する、計測するというのが、非常に好きというか。

住田:そういう観測好きでいらっしゃると。

馬場:そうですね。

住田:海が好きなんで、釣りが好きとか、そういうことじゃないんですか(笑)?

馬場:そうですね、どちらかというと測器を入れて、現場の様子を測るというのがまぁ、どちらかというと好きですね。



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