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京都大学防災研究所 Presents

第19回 米田 格さん(京都大学防災研究所)

「満点の防災、奏でたい」(1ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

阿武山地震観測所から

住田:大阪市高槻市にある京都大学阿武山地震観測所にお邪魔しています。窓の外には大阪平野が広がって、今日はちょっと雨模様なんですが、はるか向こうにビル群が見えますね。この観測所は、2015年7月初めにリニューアルオープンしたばかりだそうですが?

米田:そうですね、はい。

住田:壁などは新しく塗られていますけれども、これはどういう工事だったんですか?

米田:耐震改修工事がメインの工事でして、それと共に機能改修っていうんですかね、より使いやすくするような工事でした。

住田:ところどころに丸い窓があるのですが、これは昭和の初期のような感じが漂っていますね。この建物自体はいつ建ったのですか?

米田:これがですね、1930年で、昭和5年、ですね。今からだいたい85年くらい前になります。

住田:そのレトロな感じがずいぶん評価されて、いろんなことに使われるんですって?

米田:そうですね、はい。

住田:ロケにも使われている?

米田:そうですね、ロケにも使われて、映画だと「プリンセストヨトミ」のロケ地に選んでいただいたり、あとはテレビでも、「犬が消えた日」という夏にあったスペシャルドラマだったり、あとは「砂の器」っていうスペシャルドラマでもここを使っていただいています。

住田:周りのうっそうとした森と、この非常にレトロな感じの建物の印象がぴったりなんでしょうね。そもそも、この阿武山地震観測所というのは、昭和5年にできた。なぜ昭和5年だったのか、そして、なぜこの高槻の山の上にあるのか。これはどうしてなんですか。

米田:そのころ北丹後地震や、関西のほうで結構、地震が盛んに起きていたんです。それで、関西一体の地震の観測をできる場所をということで、この大阪平野が見える阿武山という場所で、地震の観測を始めようということで、始められたと聞いています。

住田:この建物は、4階建ての部分があって、そして地下の部分もあるんですけれども、先ほど見学をさせていただいた、地下の部分には、大きな昔の地震計がそのままの形で保存されているんですね。そのなかに人の名前がついた地震計がありましたが?

米田:初期のころというか、この観測所ができた時には、「ウィーヘルト地震計」という地震計が設置されまして、そのほかにも「ガリチン地震計」っていう地震計もあったり、あとは志田先生という方が初代の所長だったんですけども、二代目の佐々憲三先生が作られた「佐々式大震計」や、「佐々式強震計」っていうような地震計が地下にはあります。全部人の名前ですね。

住田:ドイツや、ロシア系の名前がついた海外から持ち込まれたものや、日本で開発されたものがあるんですね。人の背丈よりも高い柱が立っていて、そこからワイヤーがでて、その先の針が振るようなものがあったりしましたが、最近では小さなものも、コンパクトなもの開発されてるんですね?

米田:そうですね、今ではいろんなところで観測できるように、持ち運びがしやすいコンパクト化されたものがあります。今の所長である飯尾先生が作られた「満点地震計」なんかも、手のひらに乗るようなサイズになっています。

住田:「満点地震計」、“満点”っていうのはなぜ“満点”なんですか。

米田:これを作られた飯尾先生が、いろんな思いを込められていまして、地震計を稠密に、密度濃く設置したいっていうようなプロジェクトで、「1万点の地震計を設置しよう」というのと、「それで百点満点の観測をしよう」という意味が込められて「満点計画」と名づけられたんですよ。

住田:なるほど。“万”のポイントで、沢山の地震計ではかる。するとわかってくるものがあるってことですか?

米田:そうですね。その地震波形が震源から地震計に伝わってきた記録がとれるんですけれども、その伝わってくるあいだの波形を見ることで、地面の中がどうなっているかっていうのがわかるんです。
だから、より密に置けば置くほど、その地面の中をとおってくる波形が密にみれるので、もしかすると、ここが地震を起こしているんじゃないのかっていうような、ちっちゃい部分も見逃さない観測をしたいということですね。

住田:多くの人が参加しているんですよね、これは?

米田:そうですね。研究者だけでなくて、一般の方々にもお手伝い頂きながら、進めているプロジェクトでして。学校の子どもたちにもメンテナンスしていただいているんです。下山小学校っていう京都の小学校と、鳥取の根雨小学校ですね。
これらの小学校に置かせていただいて、2か月から4か月に1回、子どもたちがメンテナンスをしてくれているんです。

住田:コンパクトになった地震計で、より地面の中がわかってくる、そういうプロジェクトの拠点でもあるということですね。米田さんは、技術職員ということですけれども、ということは地震計などの装置のメンテナンスというか、管理とか、チェックとか、そういう技術的なお仕事をされているということなんですか?

米田:そうですね、技術職員の“技術”っていうのは、最近もういろいろな意味になっていまして、「何でも屋さん」っていう感じなんですけど、一応メインとしては、地震計を設置したり、あとは設置したところのメンテナンスだったり、データの回収をして、データをチェックしながら、壊れていないかなとか、おかしなところはないかなっていうのを確認するような仕事をさせてもらってます。

住田:そこから発展して、いろんな仕事があると。

米田:そうですね、たとえば、先ほどの地震計のメンテナンスをしてもらっている子どもたちと一緒に地震計を設置したり、阿武山観測所に来ていただいた一般の方々に地震のことを説明するといったようなこともさせていただいています。



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