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京都大学防災研究所 Presents

第1回 山田真澄さん(京都大学 防災研究所 助教)

「役に立つ地震学」(1ページ目/5ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

地震計で隕石の衝突をはかる??

住田)山田さんは、地震学が専門、とりわけ、「役に立つ地震学」をうたっていらっしゃるんですが、これはどういうところから、「役に立つ」という言葉が出てきたんですか?

山田)いまの地震学では、起こってしまった現象を調べるという、あとから解明することに非常に大きなウェイトが置かれていると思うんですが、わたしがしたいのは地震学の知識を使って、いまから起こる災害の被害を出来るだけ減らしていくところにとても興味があります。
ほかにも、たとえば、地震計っていうのは、非常に高精度なので、地震による地面の揺れなどはもちろんキャッチできるんですけれども、地震以外にも、地面が揺れるという現象から、いろんな信号をとらえることができるんですね。

住田)はい。

山田)そのうちのひとつとして、たとえば、2年ほど前の夏に日本の上空に向かって隕石が落ちてきたんですよ。

住田)つまり、宇宙から隕石がやってきたと?

山田)はい。その隕石は幸いなことに落下している最中に燃え尽きて消えてしまったんですけれども、そのときに非常に大きな爆発音を出しまして、特に東海地方を中心として、いろんな人が「この大きな爆発音はなんだ」というふうに非常に騒いでいたんですね。

住田)ははあ。

山田)それで、そういったニュースを見たときに、「あ、この信号はきっと地震計で捉えられているに違いない」とピンときまして、それで地震計の信号を調べたところ、実際に信号がちゃんと地震計で観測されていたんですね。

住田)それは地震計の波というか、線のピコピコで、わかるんですか?

山田)はい。その波が、どの時刻に到達したかということを、一個一個調べることによって、地震計というのは全国に非常に高密度にありますから、その到達した時間の分布を調べることによって、それがどこから来たとか、どういう速度で伝わってきたとか、そういうことを調べることができます。

住田)じゃあ、宇宙からやってきたものもキャッチできる?

山田)そうですね。


地震計で地滑りを観測する

住田)それ以外にも、なにかあるんですか?

山田)そうですね。もうひとつは、いま取り組んでいることなんですけれども、ちょうど去年(※2011年)の9月ごろに、台風12号という非常に大きい台風がきまして、奈良県のあたりに非常にたくさんの雨を降らせたと思うんですけれども。

住田)紀伊半島は大変な被害でしたものね。

山田)はい、そのときにたくさんの地滑りが発生しまして、そういった地滑りの発生というものも、地震計の信号を使って解析できるっていうことがわかってきました。

住田)地滑りっていうのは、地面の表面の部分がこう、ずるずるっという?

山田)そうですね。

住田)それを、どんな段階で、どう地震計はキャッチするんですか?

山田)地滑りが発生すると、それも同じように地面の振動を発生させますので、大きい地滑りなんかだと、大きな音を出したりだとか、あと小さな地震みたいにがたがたって揺れたりとか、そういった小さい揺れを発生させるんですね。地震計っていうのは、非常に高性能なので、小さな揺れも敏感にキャッチできますから、その地震計の記録を使うことによって、どこでいつ地滑りが発生したかっていうことをすぐに調べることができるんです。

住田)なるほど、あの場合、山の中で人もいないところで起きていますよね。そこで、あのあたりで地滑りが起きたと、規模が大きいかもっていうことがキャッチできると?

山田)そうですね、この地滑りの発生をすぐに知らせるっていうのは、いろんなメリットがあります。例えば、地滑りが発生すると、川を堰き止めて「堰き止め湖」みたいなものをつくってしまうことがよくあるんですが、その「堰き止め湖」が、数時間後、あるいは数日後に決壊すると、下流に非常に大きな被害を及ぼしてしまうので、その下流の人々をすぐに避難させる必要があるんですね。そういったときにも、「いまここで発生しましたよ」っていう情報をみなさんにお伝えすることができれば、そういった二次的な被害も軽減することができますし、たとえばある集落が孤立してしまったという場合にも、すぐにその地滑りの発生場所がわかっていれば救援に行くこともできます。防災上は非常に有効な情報だと思いますし、活用する方法もいろいろあると思います。

住田)なるほど。地震の波、地面のふるえっていうものをキャッチするっていうことは、実はいろんな可能性があるんだということですね。



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