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京都大学防災研究所 Presents

第1回 山田真澄さん(京都大学 防災研究所 助教)

「役に立つ地震学」(3ページ目/5ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

「緊急地震速報」との出会い

住田)そのアメリカで出会ったのが、いま取り組んでいらっしゃる緊急地震速報ですね。あの、日本では地震が間もなく来るぞと、ポロンポロンポロンポロンとチャイムが鳴って、テレビでぱっとテロップが出る、あれですよね?

山田)はい、そうです。わたしがどうして耐震という建物の強さを調べるところから、緊急地震速報にいったかというと、それはアメリカの大学院に関係があります。
 わたしが行った大学は、カリフォルニア工科大学という名前で、その大学はすごく小さな大学なんですよ。それでほかの学科の授業とかも自由にとれるので、その時はわたしはまだ耐震の、土木の学科に所属していたんですけれども、地震の授業や地球物理学科の授業とかをとっているうちに、地震学ってすごく面白いなと感じまして。
 それでたまたまわたしがいた学科にも地震学の先生や、ちょうど先輩にも緊急地震速報を研究している人がいて、これは面白い研究だなあと思って、それでその先生について緊急地震速報の研究をやりたいなと思いました。

住田)アメリカでは、その緊急地震速報というのは、もう実用化されたり社会で注目を浴びたりしていたんですか?

山田)アメリカではまだそこまでの段階ではなくて、いま実用化に向けていろんな研究が進んでいるところなんですけれども。

住田)え、日本は実用化されていますが、まだむこうは実用化されていない?

山田)そうです。

住田)そうなんですか。

山田)そうです。実は日本人はまあ、地震が発生してすぐに震度の速報が出たりとか、ただいまの地震はマグニチュードいくつって出るのが当たり前だと思っているのですけれども。

住田)だいたい今の震度は2やで、とか、みんなそう言いますよね。

山田)はい。それで、すぐにテレビやラジオをつけて、その情報を得ることができるんですけれども、実はアメリカではそういうことはできていないんです。

住田)ほお〜。

山田)だから地震が発生しても、情報はそんなにすぐテレビとかでは報道されなくて、震度の感覚も、あんまりまだ一般の人はよくわかってなくて、実は日本はその点ではすごいんですよ。

住田)進んでますねえ。

山田)はい。日本全国に高密度に地震計がありまして、どこで起こってもすぐにその地震がどこで起こったかっていうことをわかるっていうのは、世界の中でもすごく限られた国しかできなくて、日本のそういうところは非常に優れています。


緊急地震速報の仕組み

住田)なるほど。その緊急地震速報、せっかくこの山田研究室に来ましたので(笑)いったいどういうものなのか、ちょっとここでおさらいしたいんですが。いまラジオを聴いている人に、緊急地震速報ってこういうものよっていうことを、ちょっと簡単に教えていただけませんか?

山田)はい。緊急地震速報を出す仕組みを、まず説明したいんですけれども、地震にはP波と呼ばれる波と、S波と呼ばれる波の2つの種類があります。で、P波と呼ばれる波は、速度が速い、早く伝わる波で、S波と呼ばれる波は、速度は少し遅いんですけれども、揺れが大きい、そういった波があります。今の日本で使っている緊急地震速報は、特に震源に近いところで、P波をキャッチしまして、ここで起こったということをすぐに解析する。

住田)まずここだっていうことを解析する。

山田)はい。それでその情報を、全国の人に、全地域に流すんですね。少し離れた地点では、まだS波が到着していない。まあ、P波も到着していない時もありますけれども、まだ波は到着していなくて、先に地震が発生したので強い揺れが来ますよという情報を受け取ることができる、これが大まかな緊急地震速報の仕組みです。情報を受信してから強い揺れが来るまでに数秒から数十秒くらいあるのが普通で、条件が悪いと先に揺れが来てしまうってこともあります。

住田)これまでも身構えることができた、安全なところにからだを隠すことができたっていう事例もあったんですよね?

山田)そうですね、特に緊急地震速報が役に立つのは、機械とか電車とか自動的に止めることができるものです。新幹線なんかを、地震が発生したあとにできるだけ早く止めるとか、そういった自動で動くシステムに対しては非常に有効に働くというふうに考えています。

住田)なるべく早く減速しておけば、スピードを落としておけば被害が少なくすむと?

山田)そうです。脱線の確率が減るとか、そういったことには有効だと思っています。



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