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京都大学防災研究所 Presents

第1回 山田真澄さん(京都大学 防災研究所 助教)

「役に立つ地震学」(4ページ目/5ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

緊急地震速報の「空振り」の理由

住田)なるほど。一方でですね、緊急地震速報ってポロンポロンってチャイムが鳴ったら、わたしたちもぱっと身構えるんだけれども、あれっ?みたいな。結局、そのあと、震度1でしたとか、3でしたとか、あるいは、なんかほとんど揺れを感じませんでしたっていう時もありますよね。緊急地震速報、いわゆる空振り?みたいなのがあるんですが、あれはどうしてなんですか?

山田)そういった空振りみたいなことは、特に2011年の3月の東北地方太平洋沖地震のあとに、非常にたくさん起きているんです。

住田)いわゆる、東日本大震災のあとですね?

山田)はい。その前は、そこまで誤差っていうものは大きくなかったんですけれども、非常に大きな地震が起きてしまうと、日本全国で地震活動が活発になってしまって、たくさんの地震が同時に起きるようになってしまったんですね。

住田)はい。

山田)今まではそういう事態を経験していなかったんで、地震は1個1個、べつべつに起きるというふうに考えていて。

住田)あいだをおいて起きるもんだと。

山田)はい、システムもそういうふうに設計されていたんです。

住田)はい。

山田)でも、東日本大震災のあとには、たくさんの地震が同時に発生するようになってしまった。たとえば遠く離れたところ、新潟と茨城みたいな離れたところでも、同時に地震が発生してしまうということがありました。
 そうすると、小さい地震が同時にふたつ発生したとしても、今のシステムでは場所をひとつ決めなければいけないんです。そこで、発生場所をまず新潟っていうふうに決めたとします。すると、小さい地震が新潟と茨城で起こっているわけですから、茨城のほうでもちょっと揺れていて、そうするとシステムは、「ああこの地震は新潟で発生したのに、茨城でも揺れているから、これは新潟のあたりでは非常に大きな地震に違いない」というふうに考えまして、新潟のあたりに速報を出す。

住田)大きな地震だと?

山田)はい。

住田)遠くで1、あんなに離れていて1なんだから、ここはもっと大きいはずだということで、緊急地震速報を出してしまうと。

山田)そういうことです。でも実際は、小さい地震が新潟と茨城で2か所で発生したと、それだけなんです。この問題は、システムをうまく改善することによって解決できる問題なので、今、我々研究者とか気象庁の方々も一緒に改善に向けて取り組んでいるところです。

住田)これは技術の力でクリアできると?

山田)はい。

住田)では、緊急地震速報もまだいろいろ改善しながら、進んでいるものなんですね。


東日本大震災では関東で緊急地震速報が出なかった

山田)そうなんです。2007年の10月から一般向けの緊急地震速報が始まったんですけれども、最初は、まずは簡単なところから始めましょうということで、一番簡単なモデルを使った仕組みで進んでいます。
 だから東日本大震災の時には、いろんな問題も明確になりました。たとえば、東日本大震災の地震は非常に大きな地震だったのに、関東のほうでは、緊急地震速報が出なくて、「どうして出ないんだ」というような問題もあったんです。

住田)あの時は最初、宮城県の沖合が震源だということで、大きな地震だと東北地方には緊急地震速報が出たんですよね。ところが、関東には緊急地震速報が出なかった?

山田)はい、そうです。それは、どうしてそういうふうになってしまったかというと、いまのシステムは、地震はある1点で発生すると考えていて、たとえば宮城沖で地震が発生した場合には、宮城沖の地震だから、宮城県は大きく揺れるというふうに予測します。
 だけど東京は、宮城沖からすごく離れているから、ここの揺れは小さいでしょうというふうに、たとえば震度3とか4というふうに予測するわけですよね。だけどたとえば、東日本大震災では、宮城沖から茨城沖まで、断層が壊れてしまった。そうすると東京でも非常に大きな揺れ、まあ震度5強とか、大きな揺れを観測するわけです。

住田)つまり、一か所で地震が起きたわけではなくて、ミシン目がばりばりばりと裂けるように、つぎつぎ、バタバタバタって地面が大きく動く。すると、離れている東京、首都圏も結構、茨城沖の結構ちかいところまでビリビリビリッと来たもんだから、大きく揺れちゃった。

山田)そうです。だいたい3分くらいかかって、ずっとその断層は壊れつづけるので、発生した時は宮城沖から発生するんですけれども、ずっと3分くらいの間にどんどんどんどん南下してきて、それで茨城沖のあたりまで壊れて、そのときには、東京にも非常に強い揺れをもたらしたっていうことになります。

住田)じゃあ、地震は点で起きるんじゃないっていうことも考えなきゃいけないですね。

山田)そうですね、それも今いろいろなグループが研究しているところで、地震が点ではなくて、ある程度のエリア、面積をもって発生するっていう、その考えをシステムにちゃんと入れ込めば、それも含めて揺れの予測ができることになりますので、今の過小評価の問題っていうのも、もっと小さくなるように、誤差が小さくなるように解決できると思います。

住田)よくわたしたちメディアでは人に伝える工夫のなかで、オオカミ少年っていう言い方をしていて、何度か外れてしまうとみんなもうこれはもう信じなくていいとか、またかっていうことになっちゃう。でもその都度、技術は進歩しているわけですね。

山田)そうですね、今回外れた、うまくいかなかった事例に対しても、わたしたちはこれはこういう理由だったからうまくいかなかったというのもちゃんとわかっているし、そのためにこの部分を変えていきましょうということも努力をしているので、当たらない、外れたからといって、ちょっと信用ならないというふうに思っちゃうんじゃなくて、実はそういうものにもちゃんと理由があって、日々改善に向けて歩んでいるんだということを感じてほしいなあと思います。



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