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京都大学防災研究所 Presents

第12回 米山 望さん(京都大学防災研究所准教授)

「三次元解析でリスクを見つめなおす」(3ページ目/5ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

数値解析の醍醐味

住田:ちょっとお話が戻るかもしれませんが、数値解析、つまり自然に起きてる現象などを計算に当てはめていくとこういう計算になるんだっていうことですか。それが、ぴたっとこう出てくると嬉しいんですか。
ごめんなさい、こういう聞き方失礼かもしれないんですが、それは何か、その瞬間てどういうものなんでしょうか?

米山:(笑)あの、土木全般がそうなんですけれども、自然現象はすごく複雑ですよね。そうすると、あまり細かくやっても、しょうがないじゃないかっていう考えが大体なんです。そうするとある程度手を抜いてもまぁ、そんなに違わないような結果が出るんですよ。
水温も違えば、流量も違う、だからそこでなにかあるひとつのものに決めても、しょうがないんじゃないかっていうような考えがあるんです。
そこの底流に二次元三次元の話もありまして、そんなに複雑に動くんじゃないんだから、三次元じゃなくて二次元でいいでしょと。計算時間もすぐ終わるし、っていう考え方なんですよ。
でも、僕はそこで、「いや、わずかでもこう、上下複合に流れるんだから、ちゃんと三次元でやっとかなきゃダメだよ」というふうにして、すごい大変なんですけど、苦労してやってるんです。すると、先ほどの北海道のようにちゃんと答えが出てきてくれると。それですね。がんばれば。

住田:そこに見えてくるものがある、そしてぴたっと一致する。今、米山さん目がきらーっと光りましたけれども、そこが研究の喜びでもあるし、そういうことが実は大切なんだと。もう、研究の最初の段階から、そこに目をつけてらっしゃったんですね。そのあと、米山さんは電力中央研究所に入られまして、原子炉の炉の中の流動解析をテーマにされます。

米山:あの高速増殖炉っていうのがその頃ですね、あの「もんじゅ」の後のFBRっていうのが計画されてまして、その中の流動っていうのをできるんじゃないかということで、電中研に採用されてからやりました。ただしですね、その次の年くらいに事故がありまして。

住田:もんじゅはたびたび事故がありまして、じつはナトリウム漏れっていうのもありました。

米山:そういうのもありまして、大々的にそういうグループを作るのはちょっと様子を見ましょうということになって以降は、揚水発電所の、つまりダムの濁質長期化問題というものについて研究してました。

住田:揚水発電所っていうのは、ちょっと高いところに一度水をくみ上げておいて、水がザラザラって落ちてくるので発電するわけですね。

米山:ダムと言うのは基本的に川の流れをせき止めますから、たとえば、大雨が降ったら川の水がどろどろになりますよね。ダムが無ければ、そのまま、すーっと海までいってきて、たとえば次の日くらいには、きれいな水が流れてくるんですよ、大雨が終わってますからね。

住田:上流では、もうきれいな水になっているということですね。

米山:しかし、ダムがあると、一度ため込んでしまいますので、その水をゆっくりゆっくり出す事になります。そうすると、ずーっとにごった水が出てきてしまうんです。

住田:濁り水をためて、ずるずる長く流してしまうことになると?

米山;もっと丁寧に言いますと、下流河川の濁水長期化なんです。ダムの下流の河川の濁水長期化になると、アユがいなくなるとか、いろんな被害が考えられます。

住田:生態系などにも影響が出てくるんですね。

米山:そういう時にはどういう風に運用したらいいのかとか、何日くらい置いといたらとか、どのくらいの勢いで上へあげればいいかとか、そういうことを計算する必要があったんです。

住田:流体、つまり水のような液体の動きっていうのは、これは、上から眺めただけではわからないということなんですね?

米山:ええ、それで三次元でやらなければいけなかったということです。



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