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京都大学防災研究所 Presents

第21回 宮本 匠さん(兵庫県立大学 専任講師)

「人々が輝く、ときめきの災害復興論」(1ページ目/4ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

中越地震の被災地・木沢集落から

住田:2004年の秋に、直下型の新潟県中越地震で大きな被害を受けた長岡市の木沢集落、旧川口町の木沢集落に、今、お邪魔しています。はるか向こうには、3つの山のいただきがありますが、あれは?

宮本:越後三山ですね。

住田:右から?

宮本:八海山、中ノ岳、駒ヶ岳ですね、はい。

住田:災害復興を研究している宮本さんがここに何度も通って、そして一時期は、この麓あたりに住んで、ずっとこの町の人、村の人とつながりをもってきたんですけれども、この魅力ですね、ここの魅力はどんなところにあるんですか?

宮本:やっぱり人ですね。やっぱり、また会いたいなって思う人が、本当に沢山いる。地震の後、こちらの地域の方が作られた記録集があるんですけれども、普通、地震の後に作った記録集だと、こんな風に壊れたのがこんな風に直りましたとか、そんな写真も沢山あると思うんですけれども、木沢の場合は、もう人が中心なんですよね。

住田:そうですね。みんなの笑顔の写真や集合写真があります。

宮本:いいですよね。

住田:にこっとしている写真が多いですね。あと、こちらのみなさんは農業で作物を作って、そして、それを食べて暮らしてらっしゃるっていう場所ですよね。

宮本:そうですね、自分でやれることは全部自分でっていう、すごくたくましいところがありますし、冬は豪雪の厳しいところなんで、その自然とうまくこうつきあいながら、豊かな生活を自分たちで作ってきた、そういう文化があると思います。

住田:宮本さんも、ここに暮らしながら、みなさんとつながりを持っていた時には、ずいぶん太ったらしいですね。

宮本:1年で15キロ太りましたね。本当に復興支援って大層に言っても、当時、学生の立場で、なにもできることが無いんですよね。そうなるとですね、できることが、出されたものをおいしく食べるっていう(笑)食べて、おいしいですね、おいしいですねって言うことしかできなくてですね、15キロです。

住田:お米どころでもありますしね、ここは。

宮本:ほんとに、おいしいんですよね。お米もおいしいし、野菜もほんとに甘くておいしいし、川にはアユもいますんで。ほんとに食べ物には恵まれたところだと思います。

「内発的な復興」とは

住田:そういう中で、まずお尋ねしておきたいことがあります。宮本さんが大事にしたいと考えている災害復興のポイントっていうのは何なんでしょうか。

宮本:僕は、内発的な復興っていうふうに言っているんですけれども。

住田:内発、内側から発するっていうことですか?

宮本:はい。こんなふうに復興したらいいっていうのが、こう、天から降ってくるんじゃなくって、地域の、そこで住んでいる人たちが、自分たちで考えて、自分たちの地域をどういう風によくしていこうかということを考えて、活動に取り組むことが大事だと思っています。

住田:阪神淡路の時もそうでしたけれども、沢山人が住んでいる都市部では、どうしても行政が区画をどうするとか、道路をどこに通す、そういうところから始まりますよね。そうじゃないと?

宮本:そうじゃない。ただ、これがまた、面白いところなんですけど、自分たちでどういうふうに地域をよくしていこうかっていうことを考えるんですけども、その時に、どうも外からやってきた人たちの視点が、実はうまく効くっていうことが中越に復興の中ではあったんですね。

住田:ちょっと待ってください。内発的。つまり住んでいる被災された人たちの、そこから発するものが大切なんだけど、外からの目も大切だと。

宮本:そうなんです。っていうのは、そこに住んでいる人たちは、自分たちがどんな“宝”を持っているかっていうことが、実はよくわからないんですね。
例えば、雪解けの季節の新緑の、この緑の色ってほんとに美しいですね。でも「そんなもんだろう」みたいな。「こんな山菜があるんですね、めちゃくちゃおいしいですね」、「いやこんなの当たり前だろ」と。

そこに住んでいる人たちにとっては、自分たちの足元にあるからこそ、実は見えなくなっているものっていうのを、外の人の目線を借りながら、地域の人達が、こんなに当たり前だと思っていたことは、実はとっても貴重なものなんだとか、実はすごいことなんだっていうことに気づいていく。そういうプロセスが復興の中で、とても大事なんじゃないかなって思っています。



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