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京都大学防災研究所 Presents

第2回 松四 雄騎さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「山を診る地滑り学」(2ページ目/6ページ)

【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

きっかけは恐竜

住田)そもそも、松四さんがこの地滑りの研究を志すようになったきっかけがあるんだそうですが、それは何ですか?

松四)実は最初に地球科学を、これは地球のことを学問する分野ですが、それを目指した時は、古生物学者というのになりたかったんです。

住田)古生物、つまり古い生物?

松四)ええ、そういうことです。いわゆる、化石を掘ってそれを調べていくというような学問なんですけれども。それはNHKスペシャルで、地球大紀行というのを1980年代にやっていましたけれども、それを見まして、「ああ、これはなんと面白いものがあるんだ」と、それでわたしもこういうふうに地球を研究してみたいと考えるようになりました。

住田)その番組シリーズのなかで、特にどんなシーンが印象に残られたんですか?

松四)やはり、当時はまだ中学生だったものですから、恐竜を発掘して、どういうふうに恐竜が進化をとげて絶滅していったのかというのを、その化石という情報を手掛かりに解き明かしていくというシーンが非常に印象に残りましたね。

住田)その化石に興味を持たれたことが、どうして地滑りに変わってきたんですか?

松四)ええ、それは実はですね、古生物学をやろうと思って大学に行ったわけですけれども、大学に入っていざ古生物学の授業を受けてみますと、それはわたしが期待していたものとは少し違っていまして、かなり地味な分野でして(笑)。

住田)どんなふうに地味だったんですか ?(笑)

松四)ええ、まあ、恐竜みたいな派手なものはあまり日本には出てこないわけですね。それでわりと新しい時代の貝の化石とかそういったものを、細かく、非常に熱心ではあったんですけれども、解説してくださる先生がいて、でもそれはわたしのイメージとはまったく違ったわけですね。それで一度、まあ、夢が途中で無くなってしまったといいますか、挫折してしまったわけですね。

住田)でももう、大学入っちゃいましたしねえ。

松四)ええ。そうですねえ。

住田)どうしましょう。


八丈島は二つの火山からできている

松四)はい、地球科学の分野には「巡検」という、大学の先生があちこちに学生を連れて行って、その現場を巡ってみて、調査の仕方なんかを学ぶ、という授業がありまして、野外実習というような授業なんですけれども、その巡検というのは地形学という分野の巡検だったんです。それであれは確か2年生から3年生への春休みに、八丈島に行きまして、そこで何をやったかと言いますと、八丈島というのは地面の形が瓢箪型をした島なんですけれども。

住田)北側には山があり、南側にも大きな山がある?

松四)ええ、そうですね。そのふたつの山が、全然違う形をしていると。

住田)ほう。

松四)それは、実は、両方とも火山なんですけれども、ひとつは新しい火山で、もうひとつは古い火山なんですね。その年代の違いによって、山の形が全然違うんですよというようなことを勉強しました。

住田)へえ。あの、ちょっと八丈島の地図を見ますとね、北側は確か八丈富士、ありますね?

松四)そうですね。

住田)これはどういう? どういう形なんですか?

松四)八丈富士はきれいな円錐形をしていまして、「成層火山」なんですけれども、新しいその火山から出てきたものが降り積もっている、新しい地形なんですね。

住田)ちょうど八丈富士っていいますから、富士山のように裾野がきれいな斜面の形をしていると?

松四)つまり、できてから時間が経っていないので、まだたくさんの谷ができていなくて、それほど地形が解体されていないという情景なんですけれども。

住田)きれいな円錐形をしているように見えると。片や南のほうは、三原山などがあるところですね。

松四)これは非常に複雑な形をしていまして、古い時代の火山なんですけれども、かなり長い時間をかけて、山の形が順に変わっていったということなんですね。

住田)南側はじゃあ、かなりでこぼこしている?

松四)ええ、ぎざぎざの谷に刻まれた、そういう山になっているわけですね。

住田)ぎざぎざ谷がいっぱいできていると。ははあ。

松四)わたしはそういうことを研究する学問があるということを初めてそこで知りまして、地表面の形が違っているというのを、なぜそうなっているのか、どれくらいの時間をかけてそうなっていったのかということを調べる学問があるんだということを、初めて知って衝撃を受けたということですね。

住田)この道に行けるぞと?

松四)そうですね、わたしはその巡検に連れて行ってくださった先生のところで、大学院を過ごしまして、学位をいただいたんです。



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