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京都大学防災研究所 Presents

第2回 松四 雄騎さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「山を診る地滑り学」(6ページ目/6ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

研究の夢

住田)じゃあ、最後に松四さんの研究のこれからの課題とか夢っていうのは、どんなものがありますか?

松四)そうですね、ごくごく最近始めたことですけれども、地表面に出てくる水であるとか、ボーリングを掘ってわかる地下水の状況とか、そういったものを使って、今度はそれをうまく制御していくと。地下水が雨に対して変動しているのを、うまく制御していくということを考えています。

住田)山が崩れるって、相当な力だと思うんですが、それを制御できるんですか?

松四)そうですね、まだアイデア段階ではありますけれども、山のなかで地下水が変動しているのをみて見て、危険な水位になっていれば、水を抜いてやるというようなことをしてやれば、その水は有効に使えますよね。山の湧水ですから、おいしい水として使えるわけですし、水を抜いてやれば、その浮力が働くのを防止して、深層崩壊の発生をおさえることができるんじゃないかと。

住田)なるほど〜。つまり、地面の下に水がいっぱいたまって、地面が浮いて押し上げられて、ずるっと滑るという原因になる、その水を抜いちゃおうと?

松四)そうです。

住田)はあ〜。

松四)ただしそれは自然を征服してやろうということではなくて、ある意味、山とうまくつきあっていく方法を理学的な観点で探っていこうということですね。

住田)そうですかあ。面白いですねえ、地面をみるっていうのは。

松四)ありがとうございます。多くの人がそういう地形学、あるいは地質学という分野に関心を持っていただいて、そういう目で山をみていただければいいかなあと思います。
 将来は、ボトムアップ型の防災というのができるんじゃないかというふうに思っていまして、それは、防災というのが研究者の手で「こういうふうにやります」というふうに決められるものではなくて、その地域地域に住んでいるみなさんの力で山をみたり、それから避難するにはどういうふうにすればいいかというふうなことを出していただいて、それに研究者が協力していくというような、そういう社会がつくれればいいなあと思っています。
 単に地滑りが起きるからどきなさいということではなくて、そこに住んでいる人たちがどういう人たちであるのかということが非常に大きな問題ですので、その状況に合わせたその対策を考えていくということが必要だと思うんですよね。

住田)じゃあ、わたしがたとえば山に住んでいて、山と向き合うには、どういうふうに考えていけばいいですか?

松四)まず、大きな山崩れの場合はですね、雨が降ってから逃げるのでは遅いわけですよね。ですから、雨が降ってしまう前に、どこに逃げておくかということも決めておかなければならないし、どういう人が住んでいるかによるわけですね。歩ける人、歩けない人、走れる人、走れない人がいらっしゃいますので。
 その状況に合わせて、どこにどういうふうに逃げるかということをあらかじめ考えておいて、それをまあ、確実に実行するというようなことができないといけないと思っています。

住田)住んでいる人が山と向き合って考えていかないといけない…それがボトムアップ?

松四)そうですね。地域に合わせたといいますか、人に合わせた防災・減災の仕組みというのをつくらないといけないですね。

住田)なるほどねえ、ほんとに山がちな日本ですので、わたしたちは山のいろいろな恵みもあれば、そういう危険とも隣りあわせで、その山をやっぱりわたしたちも見ていかなければ、広い意味で防災・減災ということにはならないということですよね。どうも今日はありがとうございました。

松四)はい、ありがとうございました。



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