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京都大学防災研究所 Presents

第2回 松四 雄騎さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「山を診る地滑り学」(4ページ目/6ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

防災の地滑り学へ

住田)では、防災ですとか減災、今まさにそういう研究をなさっているわけですが、そこに結びついていったのは、どういうことがきっかけだったんですか?

松四)わたしが研究していた、房総半島のフィールドというのは、過去に地滑りの災害が起こっていた場所なんですね。

住田)なるほど。

松四)それで、山崩れがたくさん起こった場所と、そうでなくて山崩れが少なかった場所がありましたので、それを比較して研究していたわけなんです。それでまあ、結局は、水の動きとか、溢れ出てくる水の量とか、そういうものを調べて、どうして崩壊が多い少ないというのがあるんだろうかということを研究していましたので、自分の研究を社会の役に立てようと思ったら、防災という方向になったわけですね。

住田)なるほど。つまり崩れ方が違うのはなぜか、崩れることを避ける、防ぐにはどうしたらいいか、こういう発展ですか? 

松四)そうですね。そのための手立てとして、どうして山が崩れるのか、どういうきっかけで崩れるのか、というようなことをまあ、調べなければいけないと。そのためには山の中の水のことをしっかり知らなくてはいけないということなんですね。

住田)なるほど。この地滑りの研究には、水の流れをチェックするなどがありましたが、いろんな道具をお使いになると?

松四)はい、そうですね。

宇宙線が語る地表の歴史

住田)その中のひとつに、宇宙線というのがあるそうですが。

松四)宇宙線といいますのは、放射線の一種なんですけれども、わたしたちこうやって過ごしているあいだにも、もう1秒間にからだを何個も何十個も宇宙線というのが通り抜けているわけなんですね。

住田)そうなんですね。

松四)それを使って研究するということを、今やっています。

住田)これが、地表や地滑りと、どう関係があるんです?

松四)宇宙線が地表面にまで到達しますと、そこで地表をつくっている石とぶつかります。そうすると、そこに今まで無かった元素が、どんどん出来ていくんですね。

住田)宇宙線が地面、地表にあたると反応を起こして、何か物質ができる?

松四)そうです。具体的には、ベリリウムという元素が出来るんですけれども、そのベリリウムという元素を使いますと、いろんなことがわかってくるんです。具体的には、地表面の年代であるとか、地表面の削れる速度とかいうものがわかったりします。

住田)どうしてわかるんですか?(笑)それがちょっとわからないんですけれども、教えてください。

松四)はい、宇宙線が地表面に降り注いでいますと、それはいわば白い地表面に、赤いペンキをぺたぺた自然が塗ってくれているようなものなんですね。ですから、わたしたちがあるとき調査にいって、岩石をもってくると、その岩石はもとは白かったんだけれども、いまどれくらいペンキが厚く塗られているかということを、そのベリリウムの量を調べることによってわかるわけです。
 ですから、地表面にさらされている時間が長いほど、赤いペンキが厚く塗られているということで、どれほど赤くなっているか調べることで、年代がわかるということになるわけですね。

住田)ずうっとさらされてくると、そのベリリウムという物質が多くて、言ってみれば、真っ赤な地表なんだけど、何度か崩れたり流れたりすると、その多い少ないがわかると。

松四)そういうことですね、はい。山の頂上の岩石でもいいですし、川の中にいって砂をとってきてもいいんです。砂の場合はですね、その山が流域をもっていて、その砂を排出したわけですけれども、その流域のなかに、赤いペンキがぺたぺた塗られていると。
 でも、赤く塗ろうとするんだけれども、山が崩れていくもんですから、出てくる砂はピンク色なわけですよ。白と赤がまざったピンク色になっていて、それがどれくらい赤に近いのか、白に近いのかということで、山がどれくらいの速度で削れて、土砂を出しているか、ということが調べることができるというわけですね。



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