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京都大学防災研究所 Presents

第2回 松四 雄騎さん(京都大学 防災研究所 准教授)

「山を診る地滑り学」(5ページ目/6ページ)
【聞き手 住田功一アナウンサー (NHK大阪放送局)】

山が出す土砂の量がポイント

住田)山というのは、せり上がって出来た、そのあと水ですとか風ですとか、あるいは大地の揺れですとかで、どんどんどんどん崩れて変化していく。で、土をどんどん出していくというわけですが、土をどれだけ山が出していくかというのは、そのあと、どういうことにつながっていくんですか?

松四)山がどれくらい土砂を出すかということは、非常に重要な問題でして、たとえば、山の中にダムをつくりますね。そこには水も流れこんでくるけれども、土砂も流れこんでくるわけです。それで、ダムがどれくらいもつだろうかということを推し量るためには、その山がどれくらい砂を出す能力をもっているかということを調べておかなければいけないわけですね。 

住田)なるほど。

松四)それから、砂防ダムなんかの場合ですと、どれくらいの時間で、その砂防ダムが砂でいっぱいになってしまうか、というようなことも調べてからつくらないといけないので、そういう方面で役に立つということですね。

住田)むやみやたらにつくってもやっぱりだめで、どういうふうに、土、山が変化しているかということを知っておかないと、防災・減災にはならないと?

松四)そういうことですね。今を知って、できるだけ効率よく減災のシステムをつくっていくということが大事だと思っています。

住田)やっぱりそういう意味では、非常に地道なフィールドワークなどで、山を知る、分析するっていうことは大切なんですね。

松四)そうですね、わたしたちがとっているのは、理学的なアプローチでして、これは要は、基礎研究ということですね。基礎研究をして、山のことをよく理解しておいて、それを工学に役立てていると。実際にものをつくったり、あるいは避難するための基準をつくったりということになっていくわけですよね。

地滑り防災を実現する地図

住田)研究されているなかで、いわゆる技術も発達し、コンピュータも発達して、新しいことがどんどん蓄積されてきたと思うんですけれども、いっぽうで課題というのは、どういうところがあると思いますか?

松四)そうですね、いま現在必要なのは、詳しい地図がもっとたくさん必要だと感じています。

住田)ええ。

松四)といいますのも、いま日本全国で整備されている地図の情報というのは、10mのメッシュが基本であるということですね。10mおきに、ひとつの標高データを与えて、それを日本全国整備しているという状況になっているんですけれども、大きな山崩れの場所をピンポイントで予測しようとする場合には、そのさらに10倍の精度、1mごとにその標高点が与えられているぐらいの詳しい地図が必要なんです。
 それは非常にコストもかかりますし、時間もかかりますので、ひとつの大学の研究室でやるというのは不可能なんですね。ですから、国の方針として、そういう地図を整備していくということを、早急にやる必要があるかなと思っています。

住田)つまり、もっともっとキメの細かいデータを蓄積していけるような地図をつくらなければいけない?

松四)そういうことですね。それを日本全国で整備して、たくさんの人の眼で監視していって危ないところを抽出していくという作業が必要になると思っています。

住田)なるほど。日本はそんなに大きな国ではなく、小さな島国であると言われますけれども、非常に地形に変化があるし、急な斜面も多いし、そんなところを、全部チェックしていくというのは、なかなかたいへんな作業ですよね。

松四)そうですね。大変ではありますけれども、今回の紀伊半島の災害で、奇しくも、そういった地道な方法が非常に有効であるということが証明されてしまったという面がありますので、もう道筋はある程度見えていると。ですから、あとは時間がかかっても、大変でも、それを実行していくということが必要だと思います。

住田)とにかく徹底的に、山、谷、そういったものを調べて、どこに危険があるか、斜面や山を見ていくということですね。

松四)そうですね。



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